視覚に障害がある人が自由に移動できる社会をつくるには
移動の困難さを解決する
障害行動科学や社会福祉学、保健福祉学といった学問分野では、オリエンテーションとモビリティに着目しながら、視覚障害者の社会参加を阻むさまざまな要因や、その解決方法を考えています。近年では、文書や文字を音に変換する技術が発達するなど、視覚障害者が働いたり勉強したりする環境は整いつつありますが、移動の困難さは依然として残っています。視覚に障害があっても、行きたいときに、行きたい場所に、一人で移動できる社会をつくるためには、こうした学問の力が不可欠なのです。
オリエンテーション&モビリティ
「オリエンテーション」とは、目や鼻、耳、皮膚感覚などを使って周辺の状況と自分自身の相対的な位置を知ることで、中でも目から得られる情報は最も依存度が高い情報です。しかし、視覚に障害があると目からの情報が遮断されて自分がいる位置や向いている方向がわかりにくくなり、たとえ通い慣れた道であっても、道路工事が行われていたり、自動車や自転車で一部がふさがれていたりすると、状況判断が難しくなります。また「モビリティ」とは段差や壁にぶつからないように登ったり、止まったり、壁伝いに歩いたりする技術やプロセスのことで、同様に視覚情報を常に更新することが不可欠です。
新たな点字ブロック
視覚障害者のオリエンテーションとモビリティを大きく助ける道具の一つが点字ブロックです。点字ブロックの突起部の高さは日本産業規格(JIS)で5mm(±1mm)と定められています。これは屋外の凹凸やゆがみの多い道などにおいて、視覚障害者が正しく目的地にたどり着けるかどうか、さまざまな実験を行って定められた数値です。しかし、空港や大きな駅の構内のように床が平らで滑らかな屋内では、この5mmの高さが高齢者や車いす利用者などの歩行の妨げになることもあります。そのため近年では白杖でたどりやすく、かつ誰にとっても妨げにならない適度な高さのゴムマット製の点字ブロックが開発され、その最適化の研究も進められています。
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先生情報 / 大学情報
岡山県立大学 保健福祉学部 現代福祉学科 教授 高戸 仁郎 先生
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