地域を守り支えている消防団~東京の消防団は大丈夫か?~

地域を守り支えている消防団~東京の消防団は大丈夫か?~

減少している消防団員

大規模災害における対応は、「自助」「共助」「公助」が重要だと言われています。まずは個人レベルで災害対応を行い、無理な場合は近隣住民と助け合い、それでも無理な部分を行政が担当します。消防においてもこの考え方に基づいて「常備消防」と「非常備消防」があります。常備消防とは24時間体制で災害などに対応する、いわゆる消防署です。それに対する非常備消防は、普段はほかの職業を持つ団員が、非常時に対応する消防団のことです。消防団は大部分の市町村に存在しています。しかし高齢化や地域コミュニティの崩壊など社会構造の変化によって、消防団員の人数は少なくなってきているのが現状です。

常勤の職員が必要

2011年の東日本大震災では多くの消防団員が犠牲になりました。中には水門を閉めに行って津波に巻き込まれた団員もいます。このような危険な作業も消防団の仕事なのかという疑問があります。これは消防団に常勤の職員がいないことが原因のひとつだと言われています。常駐する人がいれば専門的な知識を蓄積することによって、危険かどうかの見極めができるので、消防団の仕事の範囲を判断することが可能になります。

「東京市」が管理する消防組織

東京は消防にとって特別な地域です。消防行政は市町村で行いますが、東京23区は特別区で市町村ではありません。また東京都も市町村ではないため管理することができません。そのため、消防組織法上では23区を現実には存在しない「東京市」とみなして東京消防庁を設置しています。23区内にも消防団は存在しますが、住民にとって一番近い存在である「区」から切り離されて東京消防庁の管理となっています。そのため、もし大規模災害が起こった場合、それぞれの区が独自に対応したくても指揮命令系統が区にはないので何もできない状況です。かつては「江戸の華」といわれた火事を消すための「町火消し」から始まった消防団が、その地元の区で非常時に動けない体制であることは早急に改善すべき問題です。

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先生情報 / 大学情報

関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 永田 尚三 先生

関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 永田 尚三 先生

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防災行政学

メッセージ

社会安全学部とは、どのようなことを学ぶ学部だと思いますか? 防災はもちろんのこと、食の安全、コンプライアンス(法令遵守)や公衆衛生など、さまざまな社会の安全に関することを勉強する学部です。あなたは将来、何になりたいですか? 社会の安全に関わる仕事は、警察官、消防官、自衛官だけではありません。最近では会社にもコンプライアンス部門があり、行政の一般職にも危機管理に関する知識が求められます。今、社会において、安全を守る専門的な知識が求められている時代です。ぜひ社会安全に関わる勉強を一緒にしませんか。

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1886年、「関西法律学校」として開学した関西大学。商都・大阪に立地する大学らしく、学理と実際との調和を意味する「学の実化」を教育理念に掲げています。2010年4月には、JR高槻駅前の高槻ミューズキャンパスと、大阪第2の政令指定都市である堺市の堺キャンパスと、2つの都市型キャンパスを開設。安全・安心をデザインできる社会貢献型の人材を育成する「社会安全学部<高槻ミューズキャンパス>」、スポーツと健康、福祉と健康を総合的に学ぶ「人間健康学部<堺キャンパス>」を開設しました。