大気の中では何が起こっている? レーザーが解き明かす大気の秘密
オゾン層を破壊している物質
オゾン層の破壊には、フロンガスが大きく関係しています。初期に開発されたフロンの一種であるクロロフルオロカーボンという炭素とフッ素と塩素から成る化合物は、非常に安定しており、毒性もほとんどない点が特徴です。事故などで燃えたり、中毒を起こす可能性が低いことから、車などのエアコンに使われてきました。しかし、その高い安定性が仇となり、大気中に放出されてもほとんど壊れず、成層圏の上部まで拡散します。そこでようやく、波長の短い紫外線によって壊れるのですが、その際、発生する塩素原子の触媒作用によってオゾン層を破壊してしまいます。
大気中の物質の反応を解き明かす
オゾンに限らず、大気中には無数の物質が存在しています。一部の例外を除き、基本的にはあらゆる物質が大気中で反応を起こし、変化します。例えば、自動車に使われるガソリンも徐々に蒸発しますが、そのまま溜まり続けるわけではありません。大気中ではフリーラジカルという非常に活性の高い物質がごく微量に生成されており、その一つであるOHラジカルがこの蒸発したガソリンと反応を起こし、それをきっかけとして段階的に水と二酸化炭素に分解されます。このように、大気中に含まれる物質が反応するメカニズムを解き明かす学問が「大気化学」です。
大気中の物質を測定するレーザー
大気化学の世界では、ごく微量の物質の測定方法がさまざまに開発されてきました。中でも、蛍光性の物質を高感度で検出できるレーザー誘起蛍光法や、密閉された空間でレーザーを反射させ微弱な光吸収を高感度で検知できるキャビティーリングダウン分光法などが開発され、大気化学の発展に貢献してきました。そのほか、1970年代からフィールド観測で使われるようになったライダー(LIDAR)は、レーザー光を上空に発射し、散乱して戻る光を調べることで、大気中に含まれる微粒子がどの高さにどれぐらいあるかを測定することができます。測定距離は上空40~50km程で成層圏までもカバーできます。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 橋本 訓 先生
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大気化学先生への質問
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