魚はコミュニケーション能力&認知能力を持っている!
コミュニケーション能力の高い魚
日本人の食卓に欠かすことのできない魚ですが、実は高いコミュニケーション能力を持っていることがわかってきました。例えば肝がおいしいカワハギは1匹でいると白っぽいのですが、何匹か一緒にいるとやがてケンカになって、勝ったものは斑紋(まだらの模様)が目立つようになり、負けたものは体色が黒っぽく変化します。また、カワハギにはツノのように見える「棘(きょく)」(特殊化した背鰭の一部)があり、これも勝った方はピンと立たせますが、負けた方はこれ以上攻撃されないようにとたたんでしまいます。つまり、カワハギは体色や斑紋、ツノというサインを使って複雑なコミュニケーションを行っているのです。
魚が推移的推論をする!
このほかにも魚の縄張り争いにおいて、雄Aが雄Bに勝ち、雄Bは雄Cに勝ったとします。するとこれを見ていた個体が、直接闘うところを見ていなくても雄Aは雄Cより強いと推測できる種もいることがわかってきました。個体識別をするだけでなく、「雄A>雄Bおよび雄B>雄Cであれば、雄A>雄Cである」という推移関係を認識できることを示しています。
ニモの世界もアリ!?
映画『ファインディング・ニモ』でおなじみの「カクレクマノミ」は、数匹が1つのイソギンチャクに生活していて、一番大きなものだけが雌で、二番目に大きい個体が雄、それ以下は未成熟で繁殖しません。雌が死ぬと雄が雌に性転換し、三番目に大きな個体が雄として成熟します。つまり、カクレクマノミは個体群における自分の地位を認知しているのです。映画でニモは母親亡き後、しばらく父親と暮らしていましたが、本来なら父親はすぐ母親になっていないといけなかったのです。これらの詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、おそらく大脳がかかわっていると考えられます。意外に賢い魚たちの間では、もしかしたら水の中では『ファインディング・ニモ』のような会話を交わしているのかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 農学部 資源生物科学科 水圏動物学研究室 教授 山本 直之 先生
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