雌はなぜ相手を選ぶ? 魚たちの繁殖生態

雌はなぜ相手を選ぶ? 魚たちの繁殖生態

水流に耐えられるほどのイクメン

多くの生物では、雄と雌に見た目や行動の違いがみられます。この雄と雌の違いは、雌や大切な資源をめぐる雄間競争と異性に対する雌の選り好みを通した「性淘汰(とうた)」によって進化します。ここでは魚類の性淘汰に関する研究を紹介します。
ハゼの多くは雄が子育てをすることが知られており、川にすむヨシノボリもその仲間です。ヨシノボリの雄は石の下に巣を作り、求愛ダンスで雌を巣に誘うのですが、雌は速い流れの中でダンスした雄を好みます。速い流れに耐えて踊ることができる雄は、健康状態が良くて、しっかりと子育てできることから、雌は雄が求愛ダンスを踊る水の流れの速さに基づいて、子育て上手な雄を正確に選んでいると考えられます。

好みがころころ変わるヌマチチブの雌

ヌマチチブは淡水性のハゼの仲間で、やはり雄が石の下に巣を作り、子育てをします。巣作りに不可欠な石が少ない場所では石を巡って雄同士の激しい争いに勝ったものだけが繁殖のチャンスを得られますが、石が多い場所では多くの雄に繁殖のチャンスがあります。
石の多さは雌の好みとも関係します。石が少ない環境では、雌は大きい雄を選びます。大きな雄ほど、巣を作れなかったほかの雄から巣や卵を守ることができるためだと考えられます。一方で、石の多い環境では、雌は背びれの長い雄を好みます。背びれの長い雄には寄生虫が少ないことから、巣を持てない雄が少なく、雄の強さが子の生存とあまり関係のない状況では、雌は背びれの長さで雄の寄生虫への耐性などを判断していると思われます。

男らしさは諸刃の剣

コイ科の淡水魚であるオイカワの雄は繁殖期になると目立つ赤色の婚姻色を示し、赤い面積が広いほど雌に好まれます。体色が赤くなるのは雄性ホルモンのテストステロンの増加によるものですが、それは同時に免疫力の低下を引き起こします。つまり、免疫力が低下しても病気に抵抗できる強い雄が体色を赤くしていることになり、雄の婚姻色を手がかりに雌は病気に強い雄を選んでいると考えられます。

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神戸女学院大学 生命環境学部 生命環境学科 教授 髙橋 大輔 先生

神戸女学院大学生命環境学部 生命環境学科 教授髙橋 大輔 先生

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動物生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

子どもの頃は生き物が大好きだったけれど、成長とともに周りの目を気にしてその気持ちにふたをしてしまった人もいるのではないでしょうか。私もそのタイプで、大学に入ると周りが同じ興味を持った人ばかりになり、ほっとできました。生き物に興味があるなら、そのくらしをつぶさに観察しながら研究を進める動物生態学の分野は本当に楽しいです。また、身についた研究対象を深掘りする力は研究の世界だけでなく、どんな仕事でも役立ちます。身近な生き物の生態が意外とまだまだわかっていません。ぜひ目を向けて調べてみましょう。

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創立150年を迎える神戸女学院大学。徹底した少人数教育で、授業の7割が20人以下で行われ、学生と教員の距離が近く双方向で質問のしやすい環境が特長です。また、リベラルアーツのカリキュラムで実技を含む他学科の専門分野の科目を多く履修することができ、自由な学びが展開できます。「就職に強い!神戸女学院」として、人気の航空業界をはじめ、マスコミ、製造、各業界に多くの卒業生を輩出しています。2024年には国際学部と心理学部が開設され、2025年には生命環境学部※が新しくSTART!(※2025年4月開設)