生理情報と心理情報の両面で人間のメカニズムを解明する
肉体と精神を併せて考える
人間の肉体と精神は、無関係ではありません。筋肉の疲労度は機械で測定することが可能ですが、それをどの程度に感じているのかという感覚は、人によって違います。人の肉体(生理情報)と精神(心理情報)の両面からそのメカニズムを解明しようとする学問が「人間情報学」です。この学問の目的は、人にやさしい技術や、使いやすい道具、安全で生活しやすい環境を実現するための基盤づくりだと言えます。
「筋電図」で生体の情報をリアルタイムで知る
人間の体のメカニズムを知るためには、計測などによって数値として評価できるようにすることが大切です。例えば、筋肉は電気信号によって動いていますが、筋肉の種類によって信号の伝わる速度が違います。強い力を出す時に使う速筋では、信号が速く、弱い力を出す時に使う遅筋では、信号が遅く伝わります。2種の筋肉の割合は、人によっても違いますし、年齢とともに変化します。筋肉の状態を知るには、これまでは筋組織を取り出して分析するなどの手法を使っていました。しかし、「筋電図」というシステムを使用することで、体にセンサを貼り付けるだけでリアルタイムの生理情報が得られるようになりました。こうした技術を活用することにより、筋肉の特性や変化を数値として把握することができ、そこから、本人の運動機能を正しく評価できます。筋力が衰えてきている高齢者であれば、どのようなトレーニングが効果的なのか、などがわかるようになります。
点字の読めない人にもわかりやすく
心理情報の研究としては、視覚障がい者にとってわかりやすい「触地図」の開発などがあります。視覚障がい者のうち、点字が読める人は、実は1割程度です。つまり公共施設に設置された点字案内は利用できない人も多いため、形などで直感的に判断できる「触地図」の必要性が見直されています。人間情報学では、どういう形の触地図が伝わりやすいのか、人間工学や認知科学の知見と併せた研究も進められています。
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電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) 経営・社会情報学プログラム 教授 水戸 和幸 先生
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