人がいて、環境があって、はじめて建築がある
ユニバーサルデザインという考え方
日本ではいま、高齢化が大きく進んでいます。高齢社会になるとともに、福祉に対する社会的な取り組みも変化してきました。建築業界では、バリアフリーデザイン、あるいは、ユニバーサルデザインという言葉が登場しました。一般的には、高齢者や障がい者が活動しやすく住みやすい建築デザインを指しますが、「universal(普遍的な)」という言葉からもわかる通り、そこには、「あらゆる人にとって使いやすい」という意味合いが含まれています。
単に建物を建てるのが建築ではない
ユニバーサルデザインの住宅を考えるとき、どんな人が住むのか、どんなところに建てるのかという周辺環境は欠かすことのできない要素です。商店街は近いか、街のバリアフリー環境はどうかなど、街全体を見渡したうえで、そこに建てるべき住宅のデザインが描かれます。バリアフリーの考え方を突き詰めていくと、都市計画、都市環境整備までを含めた発想となっていくことがわかるでしょう。しかし実はこれは、ユニバーサルデザインに限ったことではありません。建築というものは、一つの住宅をぽんと建てるだけではなく、周辺環境とのバランスを考えることが、非常に大事なのです。
10年先、20年先の将来を見据えて
地形や立地、風土やそこに住む人々など、さまざまな要素によって街はできあがっていて、そうした環境なしに住宅を考えることはできません。そのためには、福祉、環境、地理や歴史、経済など、さまざまな分野にまたがる総合的な知見を駆使しなければならないのです。また住宅というのは、人が一生のうちに買う物の中で、おそらく最も高価であり、最も長く使用するものだと言えます。だからこそ、一時的な流行に左右されない将来を見据えたデザイン、普遍的でありながらもその場に必要とされるたった一つのデザインが求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
明治大学 理工学部 建築学科 教授 園田 眞理子 先生
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