今ある空間を再生して、まちの新たな価値に
「使い続ける」という意識
日本では2000年以降人口が減り、「空き家問題」がニュースなどでクローズアップされていますが、住宅以外にも過去の建物でうまく使えていない空間はたくさんあります。一方、海外では耐久性のある建物の価値を大胆にシフトさせ、長く使い続けるという意識が根づいている国があります。例えばフランスにある「オルセー美術館」の建物は、元は駅舎です。近年、日本の住まいでも新築ではなく「今ある建物の再生」が一般的になってきました。さまざまな空間において、従来の「現状復帰」といったリフォームではなく、価値を転換するリノベーションが求められており、今のニーズに合わせてどう再生するかを考える必要があります。
まち全体にどう影響していくのか
「今あるものをいかによみがえらせるか」という空間再生の研究では、まず海外などの事例から、建物としてだけではなくまち全体へ及ぼした影響まで考察し、それを基に実際の課題について考えていきます。例えば、長い間使われなくなった倉庫が、文化施設として生まれ変わり、地域の新しい拠点となるような事例があります。解決策の提案では、模型を作って説明することもあります。見えない概念を扱うことが多い社会学の中で、空間再生の研究は「可視化」でき、空間という実感を伴いながら今の社会をとらえていきます。
点と点をつないで広がるネットワーク
これからの空間再生は、まちの中の建物、住まいという「点」で考えるのではなく、「エリアリノベーション」というような「面」でとらえることが求められます。それは点と点がつながって、次第にネットワークが広がっていくようなイメージで、そこにはそれらをつないだり、発信したりする人の力も必要です。そのため、さまざまな領域の枠組みを超えて「空間が今の社会が抱える問題に対して何ができるのか」ということを幅広く考えることが大切なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。