みんなが発達できる場づくりの科学「教育心理学」
教え方と学び方の心理学
「教育心理学」とは、なぜ勉強するのか、どうやって教えるのがよいのか、などを科学的に探究する学問です。勉強は本来、「発達」、つまり未来の自分になるためにするものですが、往々にして勉強自体が目的になってしまいがちです。そうならないように、学習環境のデザインを検討する研究領域があります。そのポイントには「安心感」と「みんなだとできること」という2つがあります。
「安心感」と「みんなだとできること」
学習とは、「知らないことを行うこと」なので、不安がつきものです。これを「リスク」と言います。間違えるのではないかというリスク、人前で行うことのリスクなどがあると身体が硬くなり、本来できることもできなくなります。しかし、そこで安心できる雰囲気がつくれるとリスクを恐れず発言ができ、どんな意見でも受け止められるようになります。この「安心感」は教師だけがつくるものではなく、学ぶ場にいるみんなでつくるものです。それがもう1つのポイント「みんなだとできること」です。人間は状況や環境が変わると違うことをしたり考えたりします。学校の授業も、複数の人が集まって学ぶので、1人で学ぶときにはできないこともできるようになるのです。
教師の大きな役割は、クラスに安心感をもたらすとともに、ひとりのとき以上のことが起きるような仕掛けをすることだと言えるでしょう。
集団を対象とした研究はこれから
この分野の研究では、心理学の手法を使って、実際の授業を観察したり、授業づくりをしたりします。ただ、今までの教育心理学は個人中心で、集団での学習の研究はほとんどされてきませんでした。安心感を生むための手法と理論も、これからの研究によっていろいろと考案されていくでしょう。研究者がそれを現場に提案し、現場がそれを実践するという循環が生まれれば、学びがさらに改善されるはずです。
そして、こうした知見を学生が学んで新しく教師になっていくのです。教育心理学は、このように学びをもっとよくしていくことに役立っているのです。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 教授 有元 典文 先生
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