ゲーム理論でわかる大臣ポストの重要度ランキング

ゲーム理論でわかる大臣ポストの重要度ランキング

ゲーム理論とは

経済学の分析手法の1つに「ゲーム理論」というものがあります。これは複数の主体による意思決定が、互いにどのような影響を与えるのかを分析しようというものです。アメリカの数学者ジョン・ナッシュらの考え方が有名で、売り手と買い手の交渉や、オークションの分析などにも用いられています。

派閥争いをゲーム感覚で眺めてみる

ゲーム理論に依拠して、55年体制と言われた「自由民主党政権時代の大臣ポスト重要度ランキング」を割り出した研究があります。組閣の際に交渉を通じて、各派閥が大臣のポストを取り合う様子をゲーム的状況としてとらえ、どの大臣ポストが重要とみなされていたかを分析するのです。
交渉の裏舞台をモデル化し、組閣における大臣ポストの各派閥への配分と、各派閥の議席数をデータに使って分析が行われました。その結果、ランキング1位は内閣総理大臣、2位 運輸大臣、3位 建設大臣となりました(大臣の呼称などは当時のものです)。他方、不人気だった大臣ポストの中に外務大臣があります。

経済学の面白さ

この「大臣ポスト重要度ランキング」の結果から、旧建設省や旧運輸省など公共事業の利権を持つ大臣が重視されていたことがわかります。これは当時の日本政治について多くの人たちが抱いてきたイメージと一致しています。公共事業を通じて、都市部から地方へ税金の再分配を行う仕組みが、日本の政治にとって最重要案件であったことが見て取れます。ゲーム理論を使うことによって、このような政治の状況を特徴付けることもできるのです。
経済活動だけではなく、日常生活の中にあるさまざまな因果関係について論理的に分析できるのが、経済学の面白いところです。経済学と言うと、お金に関わることを分析する学問というイメージがあるかもしれませんが、それだけではありません。ゲーム理論などの手法を用いることで、政治や立法、社会の状況、人間の心理までもアプローチの対象になる幅広い学問なのです。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 経済学部  准教授 安達 貴教 先生

名古屋大学 経済学部 准教授 安達 貴教 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、ミクロ経済学、ゲーム理論

メッセージ

私が経済学に惹かれた理由は、国や地域に縛られることなく、普遍的に人や社会について考えられると思ったからです。しかし、学びを進める中で、普遍性という概念は、国や地域による違いに目を向けることによってこそ、意味付けを与えられるのではないかと考えるようになっていました。
大学で4年間かけて何かを身につけようとした経験が、あなたの大学卒業後における人生のふとした瞬間によみがえり、何らかの指針となってくれることも少なくないでしょう。自分の問題意識を磨いていくようなつもりで学んでいってみてはどうでしょうか。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。