人と人の絆を数値化して、社会の「ナゾ解き」
人の絆が与える影響
大きな震災や台風による豪雨被害など、災害をきっかけに人と人との「絆」が再注目されています。災害が起きると消防や自衛隊だけでなく、地域の人々が助け合い、救助活動をしている姿がテレビでも頻繁に報道されました。また「地域で行う子育て」や「地域での防犯や見守り」などさまざまなケースで、地域の絆、人の絆が重視されています。
絆、すなわち社会や地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念を、政治学などでは「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」と呼びます。こうしたソーシャル・キャピタルなどが社会に及ぼす影響を統計データで数値化・可視化し、原因や結果、法則などを見つけ、いわば社会の出来事のナゾ解きをしていくのが「計量政治学」です。
ソーシャル・キャピタルの格差で何が起きる?
ソーシャル・キャピタルには大きく分けると「結束型」と「橋渡し型」があります。結束型とは、組織の内部における同質的な結びつきで、例えば家族やグループ内の人と人との関係のことです。橋渡し型は、異なるグループや組織間の人や組織を結びつける人と人とのネットワークのことです。
ソーシャル・キャピタルを基にした地方自治体政策と地域コミュニティの研究では、人と人との絆が強い地域と弱い地域で何が違うのか、それにより何が起こるのかを分析しています。例えば出生率を見た場合、人の絆が強く、地域全体で子育てをする自治体では出生率が高く、そうでない自治体では出生率が低い傾向となっており、子育て支援制度の充実度や待機児童数にも差が出てくるといったことが、統計データから見えてきます。
SNSでつながる人の絆にも注目
近年はソーシャル・キャピタルの低下がいろいろな問題の原因のひとつになっていると考えられ、影響の範囲は広がっています。また、インターネットやソーシャルネットワークを通じた人の絆も生まれています。住んでいる地域も国も越えたソーシャル・キャピタルが社会に多大な影響を与えており、新たな研究分野として注目されているのです。
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先生情報 / 大学情報
常磐大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 砂金 祐年 先生
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