「火星は明日の朝から猛烈な砂嵐。」宇宙の気象を読み解く惑星気象学
惑星の気象を研究する
気象学とは、地球上のさまざまな大気現象を扱う学問であり、日々の天気予報や、気候変動問題のベースにもなっています。実用性が高いことから、地球の気象は長く研究されてきましたが、火星や金星といった地球以外の惑星にも大気があり、地球とは異なるさまざまな気象が存在しています。特に火星や金星は地球から近く、これまでにもたびたび探査機が飛ばされ、現地の大気現象が報告されてきましたが、正確なことはわかっていません。まだまだ謎の多い惑星の気象を研究する学問を「惑星気象学」といいます。
力学的な観点から気象を予測
雨や風といった気象は大気の運動によってもたらされ、大気は物理の法則に基づいて刻々と変化を続けています。地球での天気予報は、こうした大気の動きを力学的にシミュレーションし、物理法則を表す数式を解くことで予測を行っています。数式といっても、紙と鉛筆で解けるようなものではなく、スーパーコンピュータ「京」や「富岳」をはじめとする高度な処理ができる機器が用いられます。「京」や「富岳」は惑星の気象研究にも使われており、近年では火星を1キロ四方のメッシュ状に細かく区切って、高解像度の計算ができるソフトウェアの開発も進められています。
火星の砂嵐から人を守る
シミュレーションによる予測は、実際の観測データと照らし合わせることで精度が高まります。地球上ではいたるところで気象が観測されていますが、火星や金星では日常的に観測することができないのが現状です。しかし、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げた金星探査機「あかつき」が金星周回軌道に到達して以来、さまざまな観測データが集まっており、金星の気象研究も大きく前進することが期待されています。また、2030年代にはアメリカが火星に人を送り込むという計画もあります。火星では猛烈な砂嵐が起きており、送り込まれた人をこうした気象災害から守るためにも、惑星気象学の知見を用いた惑星の天気予報の重要性が高まっているのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 理学部 惑星学科 講師 樫村 博基 先生
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