高齢者向け住宅で自立した生活を送るデンマークの高齢者

高齢者向け住宅で自立した生活を送るデンマークの高齢者

高齢者福祉は19世紀から

デンマークは福祉国家として知られています。中でも高齢者福祉の歴史は、1891年の高齢者扶助法にまでさかのぼります。1919年には首都・コペンハーゲンで大規模な養老院の建設が始まり、戦後の1952年には国から各自治体に融資が開始され、質の高いナーシングホーム(老人ホーム)へと転換していきます。そして1990年代後半には“住まい”と“介護”を分けるという考え方に基づいて「高齢者住宅」や「介護型住宅」が登場し、現在多くの高齢者が生活しています。

誰もが自己負担なく介護を受けられる

デンマークでは、成人した子どもは独立するのが一般的です。二世帯同居という習慣はありません。夫婦二人または独居の高齢者にとって、介護とともに問題になるのが、孤独感や社会的交流の欠如です。それらをうまく解決したのが高齢者住宅・介護型住宅だと言えます。
高齢者住宅・介護型住宅は、共用のキッチンやダイニングと個々の居室がある、一種の集合住宅です。居室は一人あたり2部屋(リビングと寝室)が基本で、45㎡くらいの広さがあります。ここはあくまで入居者の“自宅”であり、共同生活ながらプライバシーは守れます。身体介護や家事援助などについては、介護スタッフから必要な分だけケアを受けることができます。
こういった住宅は自治体が供給します。家賃や食費などの諸費用はかかりますが、介護に関しての自己負担はありません。誰もが無料で介護サービスを受けられるのは、ノルウェーやスウェーデンなどほかの北欧諸国にもない、デンマークだけの非常に大きな特長です。

誇りを持って自立した生活を

このような住宅の普及の背景には、高齢になっても誇りを持って自立した生活をしたいというデンマーク人の強い思いがあります。デンマーク人は家族をとても大切にしますが、親に対する子どもの役目は精神的な支えであり、身体的な介護は行政の仕事である、というのが彼らの考え方なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪大学 外国語学部 外国語学科 デンマーク語専攻 教授 石黒 暢 先生

大阪大学 外国語学部 外国語学科 デンマーク語専攻 教授 石黒 暢 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

外国語学、デンマーク語学、社会福祉学

メッセージ

外国語と、その国の文化と社会について学ぶことは、外国を通して自分の国を相対的・客観的に見る作業でもあります。外国語学部というと、言語ばかり勉強すると思われがちですが、大阪大学外国語学部デンマーク語専攻には言語・文学・社会・歴史という4つの柱があり、基礎的な言語能力を身につけた上で、それぞれの研究を進めます。国民の幸福度が世界一高い国、デンマークの人々は、実際にどんな生活をし、何を感じて暮らしているのでしょう。デンマーク語を理解してその国の実態に迫ってみませんか。

大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。