ネバネバ食品の研究が資源の有効利用につながる

ネバネバ食品の研究が資源の有効利用につながる

ネバネバ食品は日本独特のもの

納豆、ヤマイモ、オクラなど、ねばりを持つ食品はたくさんありますが、この「ねばり」、つまり「植物性粘性物質」とはいったいどういう性質のものなのか、実はまだほとんど科学的に解明されてはいません。ねばりのある食べ物を好むというのは、日本独特の食習慣で、世界のほとんどの国では、ねばりのある食品は食べられていないのです。そのため、食品のねばりについて研究している科学者も、世界中にほとんどいないのが現状なのです。

ねばりの正体は食品によってまったく違う

植物性のねばりと一口に言っても、ヤマイモ、モロヘイヤ、ナメコ、海藻などの食品が持つねばりには、一つとして同じものはありません。成分や構造もまったく違うものなのです。だからこそ、それぞれのねばり成分は、はんぺんなどの練り製品、まんじゅうの皮などの食材から、肌の保湿剤、水の浄化などに至るまで、さまざまな用途に利用することができます。例えば、そばを打つときには、そば粉だけでは固まらないので、つなぎとしてとろろを使うことがあります。ヤマイモ類は加熱するとねばりがなくなるという性質を生かし、つなぎにとろろを使用してもそばの独特な食感を保つことができているのです。

加工することで多くの用途に

ねばりを持つ食品をさまざまな用途に活用するために、ねばりそのものを冷凍品や乾燥粉末として加工する技術も開発されてきていますが、加工すると粘度が低下するなどの問題があり、品質のよい製品はなかなかできていません。良質の加工品ができるようになれば、生鮮品としては商品価値がないとして捨てられていた、形がふぞろいの青果などの食料資源を有効利用できることになります。研究が進み、まだまだ知られていないねばりの構造と性質を解明していけば、より多くの活用法を見出すことができるでしょう。農家などの生産者にも大きな経済的なメリットをもたらし、地域の活性化をはかることもできると考えられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

関東学院大学 栄養学部 管理栄養学科 准教授 津久井 学 先生

関東学院大学 栄養学部 管理栄養学科 准教授 津久井 学 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

栄養学・食品学

メッセージ

私の研究室には、テレビ番組などから、食品に関するさまざまな調査の依頼が舞い込みます。「カレーは3日寝かせるとなぜおいしくなるのか」「キノコの傘と柄どっちがおいしいの」など、「知って何の役に立つの?」と思うものも多いですが、多くの人が不思議に思う素朴な疑問に答えていくことも、研究者の役割だと考えています。科学が発達しても、食品についてわからないことはたくさんあります。単純な疑問に目を向けること、あきらめないで考えることは研究のスタートであり、社会の進歩につながる第一歩だと思います。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

関東学院大学に関心を持ったあなたは

1884年(明治17年)、関東学院は横浜山手に神学校として創立されました。長い歴史と伝統をもつ関東学院はキリスト教の優れた思想、芸術、奉仕の精神を礎に、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと広く世の中に貢献できる学問・知識を身につけた有能な人材の育成を目指してきました。現在では、文理にわたる学部を擁する総合大学へと発展。伝統に裏打ちされたキャンパスライフサポート、学修サポート、キャリアサポートの3つのサポート体制で学生一人一人に合わせた支援をこれからも行っていきます。