小児がんの子どもの食生活をサポートする重要性とは?
化学療法を受ける機会が多い小児がん
小児がんは、特定の病気名ではなく、主に15歳未満の子どもがかかる、さまざまながんの総称です。最も多いのが白血病、次いで脳腫瘍で、これらの治療ではがん化学療法(抗がん剤)を行います。がん化学療法を使った治療を受けた子どもは、吐き気や便秘、下痢、味覚変化、口内炎などさまざまな副作用に悩まされる可能性があります。こうした治療を受けながらも、日々成長していく子どもたちに対して、食事などの生活支援をどのように行っていけばよいのでしょうか。
入院中の子どもや家族が抱える食の悩み
小児がんで入院中の子どもたちの食事の実態を調べようと、2008年、全国の病院に対して調査が行われました。約130病棟からの回答を分析した結果、約1割の病棟でがん化学療法に対応した食事を提供していることがわかりました。そのほかは大人と同様の食事を出している施設が多く、副作用に悩む子どもたちにとっては厳しい状況でした。
さらに、2013年に小児がん経験者やその家族を対象に行われた調査でも、入院中の食生活などの問題が浮き彫りになりました。「焼き魚や煮物など大人用の病院食の量を減らしただけで、食欲が湧かなかった」といった不満や、家族が子どもの希望で栄養バランスを度外視したジャンクフードなどを持ち込んでいた実態が見えてきたのです。退院後、「やせすぎて筋力が低下した」「薬の副作用で見た目が変わって学校に行きにくくなった」など、日常生活に影響があったことも明らかになりました。
退院後の生活を考えた食事支援
治療中は、食欲の減退や増進という変化に子どもと家族が主体的に取り組む必要があります。こうした調査結果を受けて、子ども自身が治療中の食事や症状について知り、子ども自らが設定した食生活の目標達成に取り組むことを支援するプログラムも開発されています。小児がんの治療は進歩し、白血病は7~8割が生存できる時代になりました。退院後の生活を視野に入れた食事を含めた生活支援は、ますます重要になっています。
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関東学院大学 看護学部 教授 永田 真弓 先生
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