脳を超えることをめざすシリコンニューロンの研究とは

脳を超えることをめざすシリコンニューロンの研究とは

シリコンニューロンとは

人間の神経細胞は、電気的な働きで情報を伝達・処理しています。そこで、その電気的な挙動を電子回路で模倣すれば、人工的な神経、そして脳を、ひいては脳を超えるものを作ることができます。この電子回路を「シリコンニューロン」と言います。シリコンニューロンを作る試みは1980年代に最初のものが作られて以来、世界中で研究されています。

シリコンニューロンの情報処理

シリコンニューロンを使った情報処理には従来のコンピュータの情報処理とは違う特徴があります。コンピュータは決められた手順さえ与えられれば複雑な計算を正確に実行できます。一方、神経系は柔軟な情報処理が得意です。例えばいつもは眼鏡をかけていない知人がある日眼鏡をかけていても、その人だとわかるというようなあいまいな情報の処理や、あるケーキの作り方を覚えた人が、今日はちょっと違うケーキを作ってみようとか、材料が足りないときに自分で代わりになるものを考えるというような手順自体を自分で作り出す情報処理などです。

シリコンニューロンの利用法

シリコンニューロンが実用化されると、次のような利用法が考えられます。
まず、医療分野での利用です。一例をあげると、脊髄を損傷して下半身が不随になってしまった人に、代替の神経として使うことができます。次に、研究分野での利用法です。例えば、ある神経系の神経細胞を1個取り去り、その代わりにシリコンニューロンを接続し、全く動きが変わらなければ、それは神経細胞と同じものができたということなので、それによって神経を解析することができます。またシリコンニューロンは神経細胞と同じ時間軸で動くので、神経系のシミュレーションにも使えます。これは従来のコンピュータによる計算でもできますが、非常にコストと電力がかかります。最後に、神経形態学的ハードウェア、つまり神経系と同じように動く情報システムに応用することです。
将来は、いろいろな場面でシリコンニューロンが役立つようになることでしょう。

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東京大学 生産技術研究所 マイクロメカトロニクス国際研究センター 准教授 河野 崇 先生

東京大学 生産技術研究所 マイクロメカトロニクス国際研究センター 准教授 河野 崇 先生

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生体情報学

メッセージ

自分の興味のあることが見つかったら、それを一生懸命やってください。私は高校生の時に物理が好きで、大学生が使う教科書を読んでいました。「難しくてわからないだろう」、と思って読まなかったり、最初の数ページを読んであきらめてしまうのはもったいないことです。もちろん、わからないところはたくさんありますが、一部分でもわかるところが必ずあります。何度も読んでいるうちに、そこを中心に、少しずつその周辺がわかるようになってきます。わからないからとあきらめず、わからないなりに取り組んでみることがとても大事です。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。