大腸菌のゲノム解析から新たな検査法を開発! 食中毒の被害を減らす
見た目は安全そうな食品でも……
私たちが口にする食品や飲料は安全でなければなりませんし、通常は安全だと信じて食べています。でも稀に、目に見えない微生物が付着したり、増殖したりすることで、下痢や腹痛を引き起こすことがあります。それを「食中毒」と言います。
病原性大腸菌は食中毒を引き起こす病原体の一つで、代表的なタイプにO-157があります。しかし、O-157以外にもたくさんの種類の病原性大腸菌が存在しており、国内だけでなく世界各国で、食中毒事件を引き起こしています。
ゲノム情報を使って新たな検査法を開発
食中毒が起きると、原因となった病原性大腸菌をいち早く特定して、感染経路や感染範囲を明確にすることが、それ以上の感染拡大を防ぐことにつながります。O-157のような主要なタイプであれば、従来の検査法で検出することができますが、稀なタイプであった場合、それらを検出できず、調査を進めることができない場合が多々ありました。
そこで、稀なタイプの大腸菌を集めてゲノム解析を行い、それぞれを見分けるためのマーカー遺伝子を見つけ出し、新たに、たくさんの稀なタイプを一気に検査できる「PCR検査キット」が開発されました。
このキットを用いれば、食中毒が起こった際に、簡単に素早く、そして安価に、稀な病原性大腸菌であってもそのタイプを特定することができます。
食中毒のリスクを減らす
各所でさまざまな対策がなされていますが、なかなか食中毒事件を減らすことができません。病原性大腸菌の汚染源や汚染経路を調査し、病原体の流れや汚染を防ぐことができれば、食中毒は減らせるかもしれません。
そこで、O-157を保菌していることが分かっているウシについて、お腹の中のO-157を減らすための研究が進められています。また、先ほどの「検査キット」を使って、家畜や野生動物、河川水などでの調査も行われています。
このように、実社会で役立つような大腸菌研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 農学部 畜産草地科学科 准教授 井口 純 先生
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