認知の観点から、人の「習得・熟達メカニズム」を解明

認知の観点から、人の「習得・熟達メカニズム」を解明

こころと身体のメカニズム

部活動やスポーツクラブで、先生やコーチの指導に従って練習した結果、うまく習得できることも、できないこともあります。そうした違いは、なぜ起こるのでしょうか。
多くの場合、指導者は自らの経験に基づいて指導しています。動きの指導が中心ですが、そこに「こころの働き・思考」がどう関連しているかを検証すると、認知面の重要性も見えてきます。人間は、こころの影響を受けながら、行動しています。その行動がこころに影響することもあるでしょう。一連のメカニズムを明らかにすることで「なぜ」に迫れます。これが明確になれば、動きだけでなく認知面も含めた「科学的根拠に基づいた指導」ができて、指導者の負担軽減につながる可能性があります。子どもたちは納得して練習できるだけでなく、エビデンスに基づいて自ら練習プランを考えられるようになるかもしれません。

多様な角度からの検証

ただ、バスケットボールのようなチームプレイや、幼児や児童の集団遊びといった「集団行動」のメカニズムはより複雑です。人は、それぞれの役割を理解する、動きを予測するといった認知や情報処理によって行動しています。スポーツ科学や集団行動学だけでは見えなかったことが、認知科学をはじめ、多様な角度からの検証を加えることで新しい観点が得られます。パフォーマンス向上や教育などに役立つ方法が見つかるかもしれません。

スキル習得・熟達の過程に迫る科学

このように、学問を横断的に検証する研究はまだ確立されていない、新しい取り組みで、具体的には各分野のあらゆる手法を活用して総合的に検討していきます。身体の動きは、画像処理などの運動計測から検証します。こころの働きは、アンケート調査や「何を考えて行動したか」などを聞き取るインタビューといった心理学的な手法を用いることもあります。
こころと身体のメカニズムに迫る学問を「身体性認知科学」といいます。失敗も含めて、スキル習得・熟達のさまざまな「なぜ」を明らかにできると考えられます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

静岡大学 情報学部 情報科学科 助教 市川 淳 先生

静岡大学 情報学部 情報科学科 助教 市川 淳 先生

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認知科学、知能情報学、スポーツ情報学

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メッセージ

大学に入学したら、文系理系といった枠は忘れてください。理系でも、文章を読み解く国語や英語も必要です。文系も、数学を生かせることはたくさんあります。今のうちにほかの科目も意識して学んでおくと、大学での学びがスムーズになるでしょう。どの学問分野においても、何が問われているのか、物事の本質を見極めることが大切になります。また、現在は学問の枠を超えた学際的な研究が増えています。視野を広げて、さまざまな分野に関心をもつよう意識して日々を過ごしましょう。

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静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
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