抗議行動の変遷が一目でわかるイベント分析をメキシコの例で見る
一党独裁政治体制と経済グローバル化
メキシコでは、1929年から2000年までの長期にわたり一党支配が続きました。その政治体制は、1968年の学生運動や1982年の累積債務危機を経て次第に弱体化しました。また、1994年のメキシコ、アメリカ、カナダ間の北米自由貿易協定に象徴されるように、メキシコは経済グローバル化の波に飲み込まれました。
抗議の変遷を見る
こうした政治や経済の変化を、市民の抗議行動と関連づけて分析する研究があります。それは、抗議行動を報じた記事を集めて数値化し、抗議行動を行った主体と対象、抗議内容などで分類して分析する方法です。この方法を「イベント分析」と言います。
ここで、抗議行動を行った主体を「労働者」とし、経済自由化以前(1964-1982)と自由化時代(1995-2000)を比較してみましょう。経済自由化以前の、独裁政権の力が強い時代には、政治的な要求が少なく、労働者は企業に対して物質的な抗議を数多く行っていたことがわかります。そして、経済が自由化してからは、政治的な要求が格段に増え、企業への要求が少なくなっています。経済の自由化という大きな社会の変化が、漠然とした印象ではなく数値で表現されるのです。また強い力を持っている勢力に抗議行動を行うのは難しいということも読み取れます。一党独裁政権が強力な時代には政府を対象とした抗議が少なく、経済自由化の時代には企業を対象とした抗議が少ないのです。経済が自由化すると、企業は「賃金要求をするなら工場をほかの国に移転する」といった実力行使ができるため、労働者に対して力が強くなったと考えられます。
ほかの方法ではわからないことがわかるイベント分析
一つの抗議行動を調べるだけでは、このような変化はわかりません。イベント分析は国の経済制度や政治体制の変化が抗議行動にどう影響を与えているかが大きな視点でわかる方法です。
現在はコンピュータの言語処理を利用して、迅速に大量の記事を分析する方法が模索されています。
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