鉄道の省エネルギー走行の可能性を研究する
省エネ運転法への期待
日本は大都市を中心に鉄道網がとても発達しています。高頻度運転における列車ダイヤは秒単位で管理されており、その正確さはまさに世界トップレベルです。電気鉄道はもともと圧倒的に省エネルギーで環境負荷の小さな交通手段として認識されていましたが、2011年3月の東日本大震災後、本格的な節電への社会的要請が高まる中、さらなる省エネルギーが課題とされています。輸送サービスの水準を損なわずに省エネを実現する技術が重要です。
電気駆動系の性能から効率的運転を導く
省エネのために理論的最適な走行は、駆動時に最大加速度で最高速度まで加速し一定距離を惰行し、そして最大減速度でブレーキをかける方法です。これを基本に、駅間走行時間の配分調整を行ない、駆動系の性能を考慮したブレーキ方法を導入することで、これまでと比較し、さらに10%ぐらいの省エネが可能なこともあります。
制動時に発電をする「回生ブレーキ」を有効活用するため、高速時に緩めの減速することで、エネルギーの有効活用ができます。どのタイミングでどの強さのブレーキを作動させるかという判断は難しく、コンピュータによる支援が望まれますが、その原理を意識して運転するだけで、一定の省エネ成果が上がることも確かめられています。
鉄道は社会生活の基盤
鉄道の走行を研究対象にすることは、これまで日本の大学では必ずしも広く取り組まれてはきませんでした。しかし、鉄道が社会生活で不可欠の基盤となっている現在、事業者ともメーカーとも異なる中立的視点から、研究を行う意義は大きいのです。
例えば、天候や事故によって鉄道の運行が乱れた際、鉄道会社は運行を計画ダイヤに戻すことを最優先に考えます。しかし、乗客の不利益を最小限にするためにはどうしたらよいかという視点で、列車運行を調整しその評価をすることが重要です。その検討には膨大な解析を必要としますが、都市における質の高いモビリティを支えるために重要な研究だと考えられています。
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東京大学 工学部 電気電子工学科 教授 古関 隆章 先生
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