抗議行動を数値化して分析する「イベント分析」とは

抗議行動を数値化して分析する「イベント分析」とは

社会を変える手段の一つ、抗議行動

2011年は世界のさまざまな抗議行動が報道された年でした。北アフリカ諸国の独裁体制崩壊のきっかけになったのも抗議行動ですし、ギリシャやアメリカのデモも多く報道されました。また、比較的抗議行動が盛んではない日本でも、原発に反対する抗議行動に多数の市民が集まりました。
社会学でこのような抗議行動を研究する場合、一般的には特定のグループを研究対象とします。しかしこの方法では異なる地域、集団、時代の抗議行動を比較したり、国全体の抗議行動の傾向を知ることはできません。

抗議行動を俯瞰(ふかん)で見る

抗議行動の全体的な変化や傾向を知るために、メディアの情報を使って調査分析する方法があります。これを「イベント分析」と言います。
この方法は、新聞記事や通信社の配信記事を集めることから始まります。集めた膨大な記事を、「いつ、どこで、誰が、誰に、何を、どのような手段で、なぜ」という項目で分類しデータベース化します。こうすることで、ある国で起きた抗議行動の傾向や特徴が数値化してわかるようになります。
ただしこの研究では、まず記事を集めて整理する作業が必要です。デジタル化されていない時代の新聞記事は、とても全部調べるわけにはいかないので、ある年を抽出して調べるのが一般的です。それでも一つずつ記事を拾っていくので大変な時間を要します。

デジタル化された情報を利用

現在のデジタル化された記事ならば、自然言語処理という方法でコンピュータに読ませて、自動でデータベース化する方法が考えられます。とはいえ、研究者の思うような基準で自動的にコンピュータに処理させるのは、そう簡単な作業ではありません。現在はそのプログラミングが進んでいるところです。
しかし、これがもしも実用化され、リアルタイムで世界各国の政治・経済・社会情勢を分析できるようになれば、さまざまな研究が可能になります。例えば、ある条件が重なったら内戦が起きそうだといった予想もたてられるようになるかもしれません。

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東京大学 教養学部  准教授 和田 毅 先生

東京大学 教養学部 准教授 和田 毅 先生

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社会学

メッセージ

大学生になったら、自分の目で世界の国々を見てきてほしいです。大学の4年間とは、自分の意志で考え行動するという、本当の意味での「自由な時間」が持てる、おそらく人生で最初で最後の期間です。そのためには、できるだけ早くから情報を得て、留学などの準備を進めることが大事です。4年という期間はすぐに終わってしまいます。いつでも行けると思っていると、なかなか行けずに終わってしまうものなのです。

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