日本の妊婦さんの栄養状態は良好?
必要な栄養素が不足しがちな日本の妊婦
妊娠中の女性は、お腹の赤ちゃんを育てるために一般の女性よりも多くの栄養が必要です。実態はどうなのか、日本の妊婦を対象に、栄養に関する調査が行われました。妊婦に食事の内容や頻度、量などに関する質問紙調査を行って栄養価を計算し、さらに血液や尿からも栄養状態を測定した結果、十分な栄養を取れていない妊婦が一定数存在することがわかりました。特に、胎児の成長や合併症予防に関わる「葉酸」や「ビタミンD」などの栄養素が、多くの妊婦に不足していることがわかりました。
「痩せたい」という思いが栄養不足の原因にも
日本の低出生体重児(出生体重2500g未満)の割合は、ほかの先進国より高く、この割合の高さの要因の1つに妊娠中の体重増加量が少ないことが挙げられています。これは「痩せている方がいい」という価値観を持ち、妊娠中も体重増加を過剰に心配し抑制する人が多いことも理由として考えられます。厚生労働省の指針では、標準体重の人の場合、妊娠中に10~13kg程度の体重増加が望ましいとされていますが、「体重増加はなるべく10kg以内に抑えたい」と考える妊婦がまだまだ多いのが現状です。体重増加量を抑えたいという気持ちは、栄養素の摂取不足につながることがあり、注意が必要です。
生活習慣を見直して栄養状態を改善
栄養素の摂取が不足している人に対しては、助産師・看護師が生活習慣に関する保健指導を行うことで、栄養状態の改善につなげることができます。保健指導は口頭に限らず、妊婦が自身の栄養摂取状況を確認しやすいよう紙面などで示した上で、その人に必要な改善策を提案すると、より効果が期待できます。
しかし生活習慣や「痩せたい」という意識を変えるのは簡単ではありません。中にはもともと自炊の習慣がなかったり、周囲にサポートしてくれる人がいなかったりと食事や生活習慣を変えるのが難しい人もいます。こうした人々の心情や社会的な状況を調査し、どのようにアプローチするのが良いかを検討するのが今後の課題です。
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大阪大学 医学部 保健学科 看護学専攻 教授 白石 三恵 先生
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