大切な人との関係を壊してしまう「思い込み」の力とは?
「思い込み」は現実になる?
頭の中にある「思い込み」は現実の対人関係に影響しています。例えば、「私はAさんから嫌われている」と思い込んだ場合、仮にAさんから嫌われていなくてもAさんを避けるなどの反応をしてしまいます。その結果、本当にAさんから嫌われてしまうことがあるように、思い込みは頭の中にとどまらず、現実を作り出してしまう可能性があるのです。
このような現象は、心理学では、「予言の自己成就」と呼ばれています。
不安な気持ちは「関係の悪化」や「暴力」に
「思い込み」は、特に夫婦、恋人、親子など、大切な人との関係に大きく影響します。恋人に見捨てられたくないという考えから「もしかしたら浮気しているかも」「相手から嫌われているかも」などと思い込んでしまうと、不安な気持ちが芽生えます。そのような不安が増幅することで、束縛が激しくなり、最終的に自分も相手も関係に不満を持つようになってしまうのです。
母子や恋人を対象に行われたアンケート調査では、片方が不安を抱きやすい人である場合、その本人も相手も自分たちの関係にネガティブな感情を抱くことで、関係に不満を持つようになり、良好な関係を築けないことが判明しています。また、夫婦を対象とした2018年の調査では、片方が不安を抱きやすい人である場合、もう片方が報告する心理的DV(ドメスティックバイオレンス)被害の割合が高まる傾向が見られました。
良好な人間関係を築くキーワードは「客観視」
夫婦、恋人、親子などの関係は、周囲の人たちに可視化されにくいものです。恋人からの束縛や暴力も、親から子への暴力も「こういうものなんだ」と受け入れて過ごしている人もいるかもしれません。しかし、それは周りの人たちの恋愛関係や親子関係が具体的には見えないことによって作られた思い込みなのです。
心理学は、世間の平均値や別の考え方を提示することで、こうした人間関係に関する思い込みを解く役割も担っているのです。
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追手門学院大学 心理学部 心理学科 教授 金政 祐司 先生
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