街を元気にする景観デザイン
空洞化した街に火を灯す
「シャッター通り」というさびしい言葉があります。駅前や街の中心地が空洞化してしまい、空き店舗が増えてしまった商店街や、町並みの様子を表す言葉です。それでなくとも地方の中心市街地は夜が早く、暗い街となりがちです。そんな街を活性化し街を明るい魅力で彩るために、明かりのアートオブジェを置く試みがあります。
金沢市で毎年開催されるイベント「月見光路(つきみこうろ)」も、こうした狙いの元に始められました。今では金沢は金沢城公園のライトアップなどが世界的に評価され、日本の都市では初となる「シティ・ピープル・ライト・アワード」で見事3位を受賞するほど夜景の美しい街となっています。
景観デザインは街の重層性を意識する
「月見光路」はいわば期間限定の景観デザインですが、デザインを考える上で重要なポイントは、その景観の背景にある街の歴史を意識することです。街の良さや味わいは、長い時間の積み重ねの中で育まれるものです。金沢の街の歴史は、加賀藩前田利家が築城する以前に始まり、最先端の金沢21世紀美術館にまで連綿として受け継がれています。そんな歴史の厚みを持つこの街の特徴は、文化と市民の距離が近いことにあります。街を歩き、景色を眺め、その音に触れ(時に三味線の音が聞こえてくることもあります)、五感を働かせて吸収したものをベースにデザインを組み立てます。
その街らしさをどう表現するか
金沢にあった景観デザインを考えるなら、伝統を生かす視点は欠かせないポイントです。ただしデザインする上で「ジャンプ」することも欠かせません。伝統のエッセンスを抽出したら、それをそのまま使うのではなく、現代を生きている人間の感性で表現し直すのです。これが「ジャンプ」の意味で、その結果がデザインとなります。
景観を育んできた地域の文化性や歴史の重層性を意識しつつ、時間のつながりの中に新たなステップを刻む、というような景観デザインが、街に新たな息吹を吹きこみ、街を活性化させるのです。
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先生情報 / 大学情報
金沢工業大学 建築学部 建築デザイン学科 ※2025年4月開設 教授 川﨑 寧史 先生
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