地下シティ名古屋 ~地上の魅力を取り戻せ~
街の特性を知り、不思議を見つける
名古屋は地下街の面積比率が非常に高く、地下の都市機能も充実しています。その上、一年中空調が効いているため、ほとんどの人は地上を歩きません。言い換えれば、わざわざ地上に出てまで歩いてみたいと思えるような魅力的な場所がなく、地上に活気がないのです。そこで、地下にいる人を地上へ引き出し、その場所の持っているポテンシャルを引き出すことができないか、と考えました。名古屋市内には、昔々に建築基準法で定められた幅の地上と地下を結ぶ階段が大通りに並んでいます。しかし、この階段を人々が行き来することはなく、有効利用されていませんでした。
場所の価値に気づけば、人の居場所が広がる
そこで、階段にプロジェクターを設置して、携帯プレーヤーを接続できるようにしました。地下街でプレーヤーを持って歩いている人は、自分のプレーヤーをプロジェクターにつなげば、好きな映像などを流せます。踊り場の壁面がスクリーンに、階段がイスとなるミニシアターに早変わりし、人が集まり始めました。フェルト生地の座布団を階段に並べれば、座布団のある所はイス、ない部分は通路として線引きができ、消防法に基づく必要最低限の避難経路を確保することもできるのです。
また、地上と地下をつなぐ大きめの広場の場合、ボールが3つほど弾んでいるような映像を作って地上に投影すると、弾むボールの映像に合わせて子どもがケンケンパをし、自ら新しい遊びを作り出しました。
このような地上と地下を結ぶエリアでの映像放映のパフォーマンスは、建物の中にすべての要素を詰め込むだけの近代化の流れに対し、「建物が持つ外壁の隔ての強さをもっと柔らかくして、人々をどんどん外に出してあげよう」という一つの試みです。誰も注目しなかった場所に価値を持たせれば、人はどんどん集まるようになり、公共空間を“魅力的な自分の居場所”として取り戻すことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋工業大学 工学部 社会工学科 建築・デザイン分野 教授 北川 啓介 先生
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