ブレーキよ、鳴くな! 振動のメカニズムの解析

ブレーキよ、鳴くな! 振動のメカニズムの解析

嫌われものの振動を抑える

自動車や機械製品、電化製品など、動くものには「振動」がつきものです。振動は自動車の乗り心地を悪くしたり機械製品の精度を下げたりするものとして嫌われるため、振動の原因を突き止めて対策を講じる必要があります。車のブレーキを踏んだときに「キーッ」と音が鳴るブレーキの「鳴き」も振動によるもので、車のユーザーが快適に運転できるように鳴きを抑える研究が行われています。

ブレーキはなぜ鳴くのか

車に使われるディスクブレーキは、円板型のディスクローターを両側からブレーキパッドで挟み込むことで制動する仕組みです。このディスクローターとパッドの摩擦によって振動が生じて鳴きが起こります。摩擦力のように一定の力が作用しているにもかかわらず生じる振動を「自励振動」と呼びます。体育館でシューズの底がキュッと鳴ることや、黒板にチョークで線を引くときにカタカタ音がすること、またバイオリンの弦を弓でこすって音がするのも摩擦自励振動が生じているからです。

鳴きのメカニズムを解析して対策

こうした鳴きを抑える研究では、まずブレーキをわざと鳴かせて、振動センサで振動数、振動の向きや大きさなどを測定し、振動のメカニズムを明らかにして、そのメカニズムに適した対策を探ります。ブレーキの鳴きのメカニズムにもよりますが、解決策の一つは、パッドのローターとの接触面の一部を切り取ることです。これは、黒板にチョークで線を引くときに、撫でるように角度をねかせてチョークを進めると音が鳴らないのと同じ原理です。また、ブレーキの複数の固有振動数がお互いに近いと自励振動を起こしやすいため、質量を付けて固有振動数を遠ざけて鳴きを抑えることもできます。ほかにも、ブレーキをかけたときに生じる高熱でディスク表面にできた凹凸が振動を引き起こすような自励振動があることもわかってきました。
ブレーキの鳴きの原因は複雑で、各パーツの組み合わせによっても微妙に異なるため、この抑制は一筋縄ではいかない課題なのです。

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先生情報 / 大学情報

大分大学 理工学部 理工学科 機械工学プログラム 准教授 中江 貴志 先生

大分大学 理工学部 理工学科 機械工学プログラム 准教授 中江 貴志 先生

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機械工学、機械力学、振動工学

メッセージ

電車のレール表面が波状に摩耗することで、走行中騒音が発生することがあります。そのほかにも、新幹線がホームに入ってくるときにキーッと鳴る音も、風が吹くとブラインドがビーンと震えるのもすべて振動です。振動を勉強すると、身の回りのいろいろな現象が見えてきます。このように身の回りには意外と大事な情報や現象が転がっています。もちろんほかの研究分野でも日々の生活でそれぞれの現象を見ているのでしょう。もしあなたがまだ進路が決まっていないなら、こうした現象が面白いものを見つけるヒントになってくれるはずです。

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大分大学では学びの習得とともに、豊かな人間力の獲得が求められます。人間力とは総合的な社会人の能力を指し、幅広い学識に加えて強靱な意志と責任感やリーダーシップ、豊かな意思伝達能力、確固たる倫理観などが含まれます。これらは日々の学びに加えて、ゼミやサークルなどにおける友人や教員達との交流により養われると思います。メディアを通し、社会が何を求めているかを敏感にキャッチすることも必要です。また、就職時採用の際に必要なものも人間力です。大学生活の中で、ぜひ人間力を身に付けていただきたいと思います。