アヘンの貿易や消費から「依存」とその構造を考える

アヘン貿易とオランダ東インド会社
アヘン戦争(1840年)を知っていますか。実はその150年以上前から、オランダ東インド会社という世界初の株式会社が、インド産アヘンの貿易を拡大していました。販売拠点となったのは東南アジアのバタヴィア(現ジャカルタ)で、東南アジアや中国、ヨーロッパなどの多様な商人がいました。当初、東インド会社は、さまざまな商品を扱う商業会社でしたが、徐々に植民地統治も行うようになります。アヘンに関しては、利益を出すだけでなく、統治のために住民に対して使用を規制しなければならないという、相反する方針をとらざるを得なくなっていきます。
砂糖はアヘンから作られていた?
アヘンの貿易や流通、消費に関わる人の利害は多種多様で、オランダ東インド会社は難しいかじ取りを迫られました。例えば、当時、バタヴィア近郊には砂糖を作る農園(プランテーション)があり、日本にも輸出されていました。実は、農園では現地や中国出身の労働者が使用するために、鎮痛作用のあるアヘンが販売されていたのです。アヘンの使用は、熱帯の過酷な労働環境の中で広まった一つの「娯楽」でしたが、依存性が高いため、稼ぎの多くを農園側に搾取されていました。残酷ですが、「砂糖はアヘンから作られていた」のです。
「依存」をキーワードに考察する
バタヴィア近郊の事例から、人を何かに依存させることで稼ぎを得る「依存性消費」のビジネスモデルが明らかになります。「依存」をキーワードとしてみると、こうした歴史は現代社会の問題にも通じるところがあります。スマートフォンを中心としたゲームや動画、あるいは酒、タバコ、パチンコなども依存性が高く、知らず知らずのうちに私たち消費者は多くのお金を「費やされて」います。経済学と歴史学の観点から現代を考察するため、過去の社会や政府がどのように金銭的利益と社会的弊害の間で規制を図ろうとしていたのか、研究が進められています。
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龍谷大学経済学部 国際経済学科 講師大久保 翔平 先生
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