「中1ギャップ」を埋めるための、「コミュニティ臨床」とは?
「中1ギャップ」の背景にある状況
子どもを取り巻く課題の1つに「中1ギャップ」があります。これは中学入学後に、学級担任制から教科担任制への変化といった学校制度のギャップや、不登校などが急に増加する統計的なギャップを指すものです。これは中学で勉強が難しくなり、主体的・自立的な取り組みが求められる中で、勉強につまずいたり、小学校から登校しぶりなどがあった子どもたちが、気後れを感じてさらに登校しづらくなったり、我慢していたため特に課題が目立たなかった子どもでも、さまざまな取り組みを求められる中で耐えきれなくなるといったことなどで起こってきます。
潜在的に課題のある子どもを手助け
小学校で医療や通級(通常学級に在籍しながら個別的な特別支援教育が受けられる制度)といった、専門的援助の対象となっていなくても、潜在的に課題を抱えている子どもたちは多くいます。これまで支援が届きにくかった子どもたちを手助けし、中1ギャップの緩和の一助となると考えられるのが「コミュニティ臨床」というアプローチです。
これは専門的な心理相談とは異なり、地域のつながりの中から、子どもの課題に合ったサポートを探っていこうという試みです。例えば自己評価の低い子どもには、臨床心理学を学んでいる大学生たちが支援に入り、受け入れてもらえた実感が持てるようなサポートを行うなどが考えられます。
つながりの中での専門的援助の必要性
このような中1ギャップに対し、小学校のうちから子どもたちの抱える課題の背景やわけを理解し、適切なサポートを行うことも必要なのですが、ケースによっては心理療法や医療、適応指導教室などによる援助、さらには家族に対する支援といったさまざまな専門的援助が必要になる場合もあります。
臨床心理士は子どもの心理療法を主に担当しますが、医療や教育、福祉とつながりを持ちながら取り組む必要があるケースが増えてきています。地域の中でこういったつながりをあらかじめ作っておくことも「コミュニティ臨床」のアプローチの1つとして考えられます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 心理学教室 教授 下川 昭夫 先生
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