エコで経済的な熱駆動のエアコンを作ろう!
電気を使わず廃熱利用でエアコンを動かす
2011年の東日本大震災後にも問題になったように、夏の暑い時期など電力需要のピーク時には電力が不足しがちになります。電気を作る量は決まっているので、ピーク時の量に合わせて作れば、通常時などは電力が余ってしまいます。
電気と同様、熱もエネルギーなので、熱を使ったエアコンを作ることも可能なのです。しかも熱は、電気と違って工場の廃熱や、太陽熱など未利用の資源があります。これらをうまく利用できれば環境に優しく経済的ですが、実際には温度が100℃以下と低いので、エアコンを動かすにはエネルギーが足りないのです。現在、一部のホテルや劇場、図書館などで熱駆動の冷熱機器が実用化されていますが、その多くがエアコン内部に入っている溶液を循環させるポンプなどには電気を併用しています。
毛管力でどこまで行けるか?
100%熱で駆動するエアコンを実現させるため、ポンプの代わりに液体を吸い上げる「毛管力」を使った研究を進めています。エアコンの中には冷却用の冷媒が入っていますが、毛管に入った冷媒を熱によって蒸発させて、冷却作用を行わせたあと、冷媒をうまく循環させる状態を保つことが大事です。そのためには、熱・物質移動現象をともなう精留や分縮操作が必要です。この技術は、化学プラントなどではすでに実用化されているのですが、常に一定の温度を保って動くプラントとは違い、エアコンはその日の気温やユーザーの感覚、または好みによっても細かく温度が変わるので、難しいところです。
熱工学の身近な面白さ
目に見えて動くものを扱う機械工学の中で、熱工学は唯一目に見えない熱を扱います。熱工学は、エアコンで電気代がかからないようにしたい、暖房で足下を暖めたいという需要に応えようとしています。熱工学は、自宅や学校で体験する身近な感覚をベースに、人間が快適に過ごせる空間を機械工学の理論を使って実現しているのです。
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 先進機械コース 教授 辻森 淳 先生
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