花粉がどこを飛んでいるのかを観測するレーザー技術とは?
はるか上空の花粉を見つけるために
毎年春になると、多くの人が悩まされるのが花粉症です。日本国内では環境省や民間の気象情報会社などが、花粉がどのように飛散しているのかを観測し、風などの気象データに基づいた予報を公開しています。
従来の花粉の飛散状況を観測する方法は、地上に花粉観測器を多数設置し、どの地域でどの程度の花粉が収集されたかというデータを集め、それを反映した地図を作成するというものでした。しかし、この方法では、遠くの山から飛んでくる花粉が地表からはるか上空ではどのように飛散しているのかはわかりません。そこで注目されているのが、「ライダー(LIDAR)」と呼ばれる機器を使った観測方法です。
空に向かってレーザーを放つライダー
ライダーとは、レーザー光線を用いた観測装置です。大気中にレーザーを照射し、それが大気中の微粒子に当たって散乱する様子を計測します。従来の方法では観測しにくかった、人の手の届かない上空を飛散する花粉の様子も、ライダーで地上からレーザーを照射することで観測できるようになるのです。ライダーによる観測を従来の観測方法に組み合わせれば、気象条件によって花粉がどのように飛散するか、さらに精度の高い予測が可能になると言われています。そうすれば、花粉症に苦しむ人たちの悩みも、今後はもっと軽減されるかもしれません。
部屋の中の微粒子もレーザーで発見
レーザー光線による空気中の微粒子の観測技術は、屋内においても有効です。部屋の中のどのあたりに花粉やハウスダストが漂っているのか、弱いレーザーを照射して測定する装置が開発されています。これらの観測技術は、精密機器を組み立てる工場のクリーンルームでの活用や、一般家庭のエアコンや空気清浄機の効率化にも役立つと考えられています。このように、目には見えない大気中の微粒子の観測にも、さまざまな試みや工夫が行われているのです。
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