生物の仕組みを解明する細胞生物学は、細胞を育てる技術も大切
細胞を用いて、生体反応の謎を解明する
細胞生物学は、生物が起こすさまざまな生体反応を、細胞を用いて研究し解明する学問です。細胞は生命体の最も小さい単位ですから、細胞のメカニズムを知ることが、生命体全体を知る第一歩になるのです。
細胞を用いた実験例の1つに、内毒素(エンドトキシン)という物質が歯周病にどのように関与しているのかを調べるものがあります。内毒素とはグラム陰性細菌の外膜の構成成分で、ヒトにショック死を引き起こすこともある物質です。この実験の場合、ヒトの歯肉片から分離樹立した線維芽細胞に内毒素を添加して、細胞のDNA合成や生存に対してどのような影響を与えるかを調べるのです。
細胞を育てる技術も不可欠
このような細胞を用いた実験を有効に行うためには、まず細胞を適切に扱う技術が必要です。植物細胞やバクテリアなどを培養する以上に動物細胞を使用する場合は無菌操作が重要になります。
また、細胞は生きていますから、最も実験に適した状態になるようにコンディションを整え、そのタイミングを見計らって実験を行わなければいけません。そのためには、「継代(けいだい)」といって、培地(細胞の養分となるものを入れた溶液)に細胞の一部を植え継ぎ、「次代」として育てる作業を繰り返し行う必要があります。
細胞の種類も培地もさまざま
実験に使用する細胞にはさまざまな種類があります。アレルギー関係ならマスト細胞、免疫系を見るならマクロファージ系細胞、ヒトもあれば、マウスもサルもあり、正常細胞もがん細胞もあります。また、細胞によって培地の種類も異なります。
こうした条件を整えて実験に臨むのですが、一度の実験で必ずデータが取れるというわけではありません。根気と持続力が必要なのです。
それでも、細胞生物学に携わる研究者の多くは、生体の解明が病気を克服する薬や技術に繋がることを信じています。「研究のための研究ではなく、人のための研究をする」、ここに細胞生物学の使命の1つがあるのです。
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 生命科学コース 准教授 尾之上 さくら 先生
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