便利で楽しいだけじゃない! 防犯や医療にも役立つ音声認識技術
音声情報処理技術の活躍の場
スマートスピーカーに話しかけて機器の操作をしたり、人間の声を合成したりすることは、すでに問題なく行われています。ここには、AIが人の話す「言葉」を理解する「自然言語処理技術」と、さまざまな環境のノイズから人間の「声」に特徴的な成分を機械が抽出して認識する「音声情報処理技術」が使われています。この音声情報処理技術を、防犯や医療などにも役立てる研究が進んでいます。
医療現場の制約を乗り越える
医療関連では、声で操作する電動ベッドの研究があります。一般にインターネットにつながる機器は、膨大な情報が使えるため高い精度を保てます。しかし、病院ではハッキングされて医療機器が誤作動するなどのリスクがあるため、外部と接続できない制約があります。そこで、ベッド操作に関する言葉のみに限定するなどして精度を上げる研究が行われています。
また、聴覚障害者の発話訓練装置の研究もあります。言語聴覚士が不在のときも練習できるように、AIが発音を聞いて評価してくれる装置です。聴覚障害のある人の音声サンプルが少なく、AIの学習が進まないという問題がありますが、粘り強く研究開発が進んでいます。さらに、声帯を失った人の声を過去のデータから合成して文字を読み上げる研究もあります。
悲鳴検知システムを防犯に
防犯の面では、悲鳴を検知して通報したり警報を出したりするシステムの研究が行われています。電車や車の音などノイズの多い環境では、悲鳴検知精度が極端に落ちます。ノイズの中で悲鳴の成分のみを検出するアプリがあれば、スマートフォンをかばんに入れておくだけで、危険があったときに自動的に通報することができるようになります。
防犯カメラに悲鳴検知システムを組み込めば、悲鳴が発せられた方向に瞬時にカメラを向けることができます。また、悲鳴検知システムなら、トイレや更衣室など、防犯カメラを置けない場所にも設置できます。より安全安心な社会に向けて、期待される技術と言えます。
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