壁も天井もスイスイ登る橋梁検査ロボット「バイリム」
人の代わりに橋を検査するロボット
近年、橋の老朽化が問題になっています。日本の橋の多くは1950年代~1960年代の高度成長期に架けられており、安全に使い続けるためには、メンテナンスをしっかりと行わなければなりません。橋は1箇所の亀裂がきっかけで、崩落事故につながることもあるのです。しかし橋の点検は、足場を組んでそこに人が登り、目視やたたくなどして行うため、莫大な手間とコストがかかります。そこで考えられたのが、人の代わりに検査を行うロボット「バイリム(BIREM)」です。
ヒントはヤドカリ
開発のヒントになったのは、ヤドカリの動きでした。ヤドカリは重い貝を背負っているのに、爪を使って上手に木に登ります。それならば、磁石で爪を作って鉄の橋を登らせようと考えたのです。
バイリムは、全長約34cmの小さなボディにバッテリーや集積回路を搭載し、永久磁石の付いたリムレス(輪のない)車輪4つをモーターで動かして進みます。橋梁(きょうりょう)は、多くの鋼材で構成されていて立体的複雑構造をしていますが、磁石付のバイリムなら、鋼板に吸着して垂直によじ登ったりぶら下がったりできる上、人が行けない危険な場所や狭い隙間にも入り込めます。また「FPGA」という集積回路を使っているので、プログラムの書き換えが可能で、細かな修正や加えたい機能があるときに回路をいちいち積み替える必要がありません。
世界中のインフラ点検に
検査の目的に合わせて、バイリムに位置センサーやカメラなどを内蔵すれば、無線操作でさまざまな場所の傷などの写真を撮影したり、腐食箇所の鉄イオンを少し回収して分析したりすることが可能になります。
インフラを点検するロボットは世界の大学や企業で研究されていますが、性能、コスト、実用性をすべて満たしているのは日本で開発されたバイリムです。まだ試作段階ですが、実用化されれば、世界中の橋や高速道路、鉄塔、高電圧電線、石油・ガスなどの貯蔵タンクなど、インフラの点検に大活躍することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 機械工学科 教授 高田 洋吾 先生
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