人工衛星の画像で、地球の「ありのまま」の姿が見える
推測ではなく、衛星画像で地球を観測する
人工衛星で地球を観測すると、センサでとらえられた画像をそのまま観測に利用できるというメリットがあります。例えば、黄砂の飛来をとらえるのに、地上の観測点を利用するのでは風向きなどの気象データから推測するしかありません。ところが、人工衛星から送られる画像の場合は、実際の黄砂の飛来の様子を点ではなく面でとらえることができるのです。このように、人工衛星の場合は広い範囲を面として一度に観測することができます。
送られてきた画像をいかに解析するか
その際重要なのは、送られる画像データをいかに解析するかです。例えば、極東ロシアでは毎年、大規模な森林火災が発生します。この観測には、ノア(NOAA)と呼ばれる気象衛星が使用されています。この衛星は画像の最小単位が約1km四方ですから、それでも確認できるほどの大きな火災が解析の対象となります。また、小規模な火災の場合には直接確認することはできませんが、煙は100km以上たなびくので、小規模火災でも、火災が発生していることはわかります。問題なのは、ノアのデータは1日に2回しか送られてこないことです。これでは、リアルタイムな観測は難しくなります。
同条件での長期間観測とデータ保存が課題
このような場合は、例えば、気象衛星ひまわりの観測データを利用する方法が考えられます。ひまわり7号のデータは北半球で約30分に1回、全球で1時間に1回、送られています。しかも、静止衛星であるため地球の片側を常に観測しています。ひまわりの風の流れのデータとノアの火災のデータを合わせれば、火災の動きをほぼリアルタイムに観測できるのです。このような新しい解析方法が開発される一方で、問題もあります。地球環境の変化を知るには長期間の観測が必要ですが、新しい人工衛星が打ち上げられると、搭載されるセンサの種類が変わるなどして過去のデータとの一貫性がなくなるのです。また、人工衛星から送られる膨大な情報をいかに保存するかも課題となっています。
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東北工業大学 工学部 情報通信工学科 教授 河野 公一 先生
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