植物が日焼けする! それって一体どういうこと?
「人の日焼け」と「植物の日焼け」はどう違う?
人が真夏の炎天下、屋外で肌をさらしていると日焼けします。これは紫外線によって皮膚の細胞がダメージを受ける現象です。ダメージが蓄積されると、やがて皮膚がんになる恐れがあります。ところが同じ真夏でも、植物は青々と元気そうです。植物には日焼けの心配などないのでしょうか。実はそうではありません。真夏は植物にとっても、生きていくのに厳しい季節です。一定期間、水を得られないなどすると葉っぱが褐色に変色し、やがては枯れてしまいます。植物の日焼けもひどくなると、死んでしまう恐れがあるのです。
植物の日焼けが起こるメカニズム
植物は水が不足してくると、体内の水分を外に逃がさないよう気孔を閉じます。気孔を閉じれば、光合成をするために必要なCO₂を体内に取り込めなくなります。一方で光合成をしていなくても、葉緑体が毎日吸収する光エネルギーの量は変わりません。その結果、本来なら光合成で使われるはずの光エネルギーが、植物の体内で余ってしまうのです。余分な光エネルギーは、葉緑体の中で活性酸素を作り出します。活性酸素とは通常の酸素に電子が一つ余計に入った反応性の高い化合物です。これはがんの原因とも言われており、さまざまな化学反応を引き起こして細胞に損傷を与えます。
植物の自己防御システム
もちろん植物には、こうした活性酸素によるダメージを防ぐメカニズムが備わっています。葉緑体内部には、活性酸素をまず過酸化水素に変え、さらに無毒な水に変換するシステムがあるのです。この過程でビタミンCが必要となるため、植物はビタミンCを体内に持っています。このシステムのおかげで植物は、危険な活性酵素を安全に処理(代謝)することができます。ただし、それにも限度があります。水不足が長い間続き、活性酸素がたくさんできてしまい、代謝が間に合わなくなると、植物も日焼けによって枯れてしまうのです。
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