グローバル化の中、世界規模での「健康」を考えよう!

グローバル化の中、世界規模での「健康」を考えよう!

病気と患者を混同する危険性

世界には食糧や清潔な水が十分に手に入らず苦しむ人がいて、そういう人が住む地域の多くは結核や下痢といった感染症の脅威にもさらされています。感染症自体も怖いのですが、別の意味で危険なのが病気自体と罹患した患者を混同し、人権を踏みにじることです。国内で新型感染症患者が発見されると、即座にインターネット上で「犯人探し」が始まるのがいい例でしょう。また長年、その犠牲となってきたのがハンセン病患者や回復者です。後遺症と感染に対する恐れから「業病(前世の悪行による病)」「結婚ができない」といった偏見や差別を受けてきました。本来は守るべき患者を攻撃の対象にしてしまったのです。

多職種連携で患者と家族をケア

時には患者の家族も差別や偏見の対象となり、離婚や名前を変えることを余儀なくされる人もいます。今も一部の地域でハンセン病で苦しんでいるネパールでは、親がハンセン病に罹患している場合、子どもは抑うつになりやすく、生活の質(QOL)も低下する傾向にあります。国のケアも十分に行き届かない中、必要となるのが「多職種連携」です。日本でも近年、高齢者介護や子どもの虐待などの現場で行われていますが、看護師が患者と家族の様子を観察し、場合によっては精神科医師やカウンセラーなどの専門家に伝えるといった職種間の橋渡しが求められているのです。

感染症は決して対岸の火事ではない

これだけ世界がグローバル化すると、飛行機にマラリア原虫を持った蚊が紛れ込むことや、中南米から来た人がジカ熱を発症することがあります。日本も感染症に関わる問題と無関係ではないのです。
見落とされがちなのが、保険制度を使えない人たちです。日本の難民の受け入れ数は少ないのですが、それでも2016年の難民認定申請者は1万人以上いました。彼らの多くは国民健康保険に入ることができず、病気になっても簡単に病院へ行けません。どんな人も健康でありたいという願いは同じはずです。グローバルヘルスは国内のこういった問題についても考える学問なのです。

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先生情報 / 大学情報

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 看護学科 教授 山口 乃生子 先生

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 看護学科 教授 山口 乃生子 先生

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国際保健学

メッセージ

「グローバルヘルス」や「国際保健学」は実践のための研究です。その知識や技術は、社会的に弱い立場の人々が健康で、自分らしい人生を送れるようにするためにこそあります。
国際情勢は日々変わりますし、医療や環境、文化への考え方も日進月歩ですから、柔軟な対応力が求められます。もし海外で働きたいなら、何でもポジティブに考えるようにしてください。大変なことも多いですが、その分やりがいも大きく、違う文化を持つ人たちとの出会いは、自分の人生を変えてくれることでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

埼玉県立大学に関心を持ったあなたは

埼玉県立大学は、保健・医療・福祉の「連携と統合」を目指し、学科を超えた地域活動・研究活動を行っています。多くの優秀な若者たち、明日の社会づくりの希望を持った若い力がいつかそれぞれの地域や職場で、あるいは世界のどこかで、高い志と豊かな感性、深い知識や技術を持って貢献できる可能性を秘めた人材として育っていけるよう全力で応援します。