幸せはみんなでつくる
福祉の意味は「幸せ」
生活上の困難を抱える人や生活困窮者の生活支援など、困っている人を助けることが福祉だと思っている人は多いでしょう。それは、間違いではありませんが、マイナスの生活状況をゼロに戻すという考え方です。しかし、そもそも「福祉」という言葉の意味は「幸せ」です。近年は、マイナスの状態をゼロにすることで終わらず、その人らしい生き方や幸福の実現を志向する支援の考え方が生まれてきています。これを「増進型地域福祉」と呼んでいます。
必要な福祉から理想の福祉へ
どこの地域も、貧困や虐待、後継者不足やシャッター商店街の増加など、さまざまな問題が山積しています。さらに行政だけではできない独居高齢者の支援、通学路における子どもの見守り、地域の防災対策など、さまざまな必要が地域に寄せられます。これらは必要からの福祉です。ところがこうしたことに真摯に対処しようとすればするほど、地域は疲弊していきます。次の担い手もいなくなります。
地域福祉とは、課題を抱える当事者、住民はもちろんボランティアや企業という諸主体も一緒になってつくるものです。目の前の課題に気を取られがちなときはなかなか考えられませんが、「自分たちの地域がどうありたいのか」、さらに「本当に大事なことは何か」といった、その地域らしい理想を一度みんなで問い直してみることが必要です。めざすべき方向は、住みたくなるような地域像を共に考え、幸福を感じられる理想への福祉を可能とする地域づくりです。
幸せな地域のために
すでに実践しているケースも多くあります。例えば大阪では、小学校の通学区域ほどの規模の中で、子ども食堂や高齢者サロンの運営といった、住民主体の福祉活動が展開されています。また地方自治体が主体になり、マイナスからゼロで終わるのではなく、それ以上の水準を目指す「増進型地域福祉」の考えを取り入れ実践しようという動きも出てきました。地域福祉による幸せづくりを実現するための実践段階に、私たちはいます。幸せとは、みんなでつくるものなのです。
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桃山学院大学 社会学部 ソーシャルデザイン学科(福祉) 教授 小野 達也 先生
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