地域で共に考える高齢者の転倒骨折予防
ケガをしない環境づくり
いまや日本は人口の4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えています。その中で課題となっているのが「いかに老後を健康で過ごせるか」ということです。そのために重要なのがケガの予防です。外出時に転倒し足腰を骨折してから寝たきりになったというケースは少なくありません。
理学療法士はケガや病気をした人の機能回復が主な仕事ですが、「ケガをしない環境づくり」をすることも大きな役割のひとつです。環境づくりや具体的な対策を立てるために、行政や地域団体や企業と協力するケースもあります。
高齢者の転倒骨折を防ぐために
高齢者に多い転倒骨折の予防は、特に北海道のような積雪寒冷地においては大変重要です。予防策の柱となるのは3つです。1つ目は「情報提供」、例えば「冬は道路が滑るという情報」を高齢者にどう伝えていくのか? インターネットやスマートフォンなどを使えない人たちには、新聞などの紙媒体やテレビ、町内会での広報活動が効果的です。2つ目は「安全に移動するためのグッズ開発と検証」で、これは滑らない靴底の開発や既存商品の検証実験などを企業と共に行っています。そして3つ目は「ケガをしないための身体機能・精神機能改善に向けた指導」です。
具体的な予防法を実践
これらの研究をベースにし、地域と協力して「転倒予防教室」が定期的に開催されています。実際に高齢者が居住する地域へ出向き、運動指導や道具の使い方、道路状況の見極め方法や注意を促すことで、その地域における高齢者の転倒骨折の増減データを蓄積しています。また「雪道が滑る・滑らないの情報の見える化」では、各地域に道路状況の情報を提供する登録員を置き、リアルタイムで集めたデータをその地域の高齢者に伝達するシステムづくりをめざしています。そして身体機能面では、転ぶ原因を解明し「歩きながら考える」などの複合課題を与えながらのリハビリ運動の指導を行い、転倒事故の防止に役立つ研究成果をあげています。
参考資料
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