講義No.03632 医学 薬学

銀杏を食べ過ぎると大変なことになる!?

銀杏を食べ過ぎると大変なことになる!?

食べ過ぎ注意! 銀杏中毒

イチョウの実、銀杏(ぎんなん)は古くから日本や中国、韓国で食べられてきました。もちもちした食感でおいしいからと、ついつい手が伸びてしまう銀杏ですが、実は、食べ過ぎは禁物です。銀杏に含まれる毒素成分には食中毒を引き起こす恐れがあるからです。

毒素と栄養素の不思議な関係

銀杏中毒は、すでに明治時代には症例の報告がされていましたが、その原因は長い間はっきりせず、青梅に含まれる毒素と同じであると言われてきました。原因がわからないため、特効薬もないままの状態でした。
「銀杏と青梅の毒素は本当に同じなのだろうか」ふとした疑問から進められた研究の結果、銀杏の毒素が解明されました。銀杏に含まれる毒素「メトキシピリドキシン」はビタミンB6という栄養素に分子構造が非常によく似ていることがわかったのです。よく似ているがためにビタミンB6の働きを阻害してしまい、中枢神経で悪さをしてけいれんなどの中毒症状を引き起こしてしまうのです。

特効薬発見!

銀杏を食べて数時間後、けいれん症状が起きたら銀杏中毒の可能性があります。血液中に毒素成分が認められたら、すぐに治療が必要ですが、その特効薬となるのが銀杏の毒素とよく似たビタミンB6です。銀杏の毒素成分以上にビタミンB6を投与すると、毒の働きが相対的に弱くなり、たちまち中毒症状が治まります。小児の感受性が高いことも知られています。
銀杏中毒は人間だけが起こすわけではありません。あるとき、ペットとして飼われていたミニブタが飼い主の目を盗んで皿に盛られた銀杏を食べ、食中毒を起こしたことがありました。そのときもやはりビタミンB6の注射をすることによって中毒症状は治まりました。
銀杏の毒素は、青梅と毒素が同じであるという言い伝えに疑問を持ったことをきっかけに解明されました。当たり前だと思われているところにメスを入れることが新発見のカギとなることもあるのです。

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北海道医療大学 薬学部 薬学科 衛生薬学講座 教授 和田 啓爾 先生

北海道医療大学 薬学部 薬学科 衛生薬学講座 教授 和田 啓爾 先生

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医学、薬学、栄養学

メッセージ

世の中にはまだまだ私たちの知らない世界がたくさんあります。その未知の世界を解明していくのが私たち研究者の仕事です。研究とは、身の回りにある「不思議だな」「どうしてかな」と思うことを追究し、なぞを解明していく作業です。研究はときに苦しく、根気と努力のいるものですが、「知りたい」「わかりたい」と努力を続け、ほかの誰も成し遂げることのできなかったなぞを解き明かすことができたときの喜びはひとしおです。何ものにも代えがたい達成感を味わうことができるのが科学を研究する者の醍醐味なのです。

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