ストレスマネジメントを可能にする「認知行動療法」
慢性的な痛みの8割は原因不明?
半年以上続く慢性的な痛みというものは、その8割以上が原因不明だと言われています。痛みとは、数値として計測することが難しい、主観的なものなので、患者さん本人の気持ち次第で痛みを強く感じることもあります。まわりの人が声をかけてあげることで痛みがやわらぐ場合もあれば、声をかけるのが逆効果になる場合もあります。
痛みの原因には、肉体的な問題だけでなく、考え方、生活様式、まわりの人との関わりなど、「心理社会学的」な要素が関連しています。そこで、心理学的なアプローチによって、痛みを軽減させるという試みがなされています。
心と体のストレスに有効な認知行動療法
痛みに限らず、精神的なストレスからくる体調不良や気分の落ち込み(うつ)、対人不安などに対して、心理学では「認知行動療法」と呼ばれる治療法を使って取り組んでいきます。認知行動療法とは、心や体に出てくるさまざまな症状、困りごとに対して、その人の考え方や行動の癖、環境などを総合的に考えて、考え方や生活習慣を変えていくことで解決へ導く手法です。この療法は、心と体のストレスに対して非常に有効であるということが実証されている、科学的に根拠のある治療です。
ストレスをどうコントロールするか
「なんとなくおなかが痛い」「たくさん物を食べてしまう」「人とのコミュニケーションが怖い」など、心理社会学的な問題を解決するために、認知行動療法は広範囲に用いられています。カウンセリングでその人の状態を適切に把握することから始め、話し合いによってその人を思い込みから解放したり、日常の習慣を変えていったりするだけで、症状が改善されることもあります。アルコールや薬物などへの依存症からの社会復帰をめざす更生施設においても、認知行動療法をベースにした治療プログラムが多く使われ、効果を上げています。認知行動療法とは、ストレスマネジメント、つまり、ストレスをコントロールする方法の一つでもあるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
北海道医療大学 心理科学部 臨床心理学科 准教授 本谷 亮 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
臨床心理学、心身医学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?