アフリカの言語から読み解く文化やものの見方
言語によってものの見方が変わる
私たちは、言葉が違っていても目に見えるものは変わらないと考えます。本当にそうでしょうか。例えば、手前から順に象、木、山があるとします。アフリカのスワヒリ語では、「私の前に象が」「象の前に木が」「木の前に山が」あると表現し、視点はいつも前を向いて固定されています。一方、日本語では「私の前に象が」「象の後ろに木が」「その後ろに山が」ある、と途中から視点が変わることがわかります。
名詞が25種類にも分類される
アフリカには2000を超える言語がありますが、その中の1つにフルフルデ語という言語があります。西アフリカのセネガルからチャド周辺の遊牧民の言葉です。ドイツ語の名詞は男性・中性・女性の3種類に分類されますが、フルフルデ語の名詞は「細長いもの」とか「大型動物」など、ものの形状や性質に基づいて25種類に分類されます。面白いのは、3つの単語だけしか入っていないグループがあって、その単語は、「太陽」「牛」「火」なのです。この民族の文化で最も大切なものがここに現れています。
まったく情報のない言語を調べる方法とは?
まったく知られていない言語を調査するときは、どんな方法で行うのでしょう? まずは周辺言語の情報を集めて文法体系や発音などの予想をたてておきます。それから、その言語を話す人たちが暮らす村や町の一番にぎやかなところに行きます。外国人を珍しがってすぐに人が集まってきますから、そこからが本番です。コミュニケーションが全然とれない場合は、絵カードを示して「これ何?」というところから始めますが、英語が話せる人を探して通訳になってもらい、長老にもお願いして話を聞きます。それを録音して持ち帰り、一語ずつローマ字で文字に起こしていきます。最後に文字にしたものを自分で発音して現地の人に確認してもらうという一連の流れで調査するのです。途方もなく時間のかかる作業ですが、言葉を学ぶことでさまざまなものの見方を知ることができる興味深い調査です。
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