ブタの健康を守るために 世界初の代用初乳を作る研究

ブタの健康を守るために 世界初の代用初乳を作る研究

感染症のおそろしさ

ブタは、貴重な動物性たんぱく質を我々に供給してくれる大切な動物です。しかし、養豚農家は、豚熱のような感染症が発生すると、深刻な被害を受け、食卓にも大きな影響がでます。農場内は多くのブタが密集して暮らしているので感染が広まるスピードが速く、特に未熟な子ブタはその影響を大きく受けます。また、感染症の種類によっては、周囲に感染症を広めないようにするためにすべてのブタを殺処分しなければいけません。

初乳は子ブタの剣であり鎧

感染症からブタを守るために重要なことの1つに、子ブタの健康状態を上げておくことが挙げられます。そのためには出産直後に出る初乳をできるだけ早くたっぷりと子ブタに与えることが重要です。初乳には栄養分とともに母ブタが持っている抗体が含まれています。抗体とは、病原体と戦う剣であり、病原体から体を守る鎧でもあるため、子ブタは十分な初乳を飲めないと病気にかかりやすくなってしまいます。しかしブタは人間が改良を加えたことによって、初乳の量は変わらないまま一度に産む子ブタの数が増えています。そのため、なかには初乳を飲みそびれてしまう子ブタもいます。

不足分を補う代用初乳

現在世界で販売されている「ブタの代用初乳」は、実はブタの抗体が入っていないため、本来の意味での初乳の役割は半減してしまいます。
課題を解決するために、妊娠していないブタに本物の初乳を出してもらおうという研究が始まりました。本来、ブタは妊娠して出産しないと初乳を作ることはできませんが、妊娠していないブタに、ブタが妊娠したときに出すホルモンを投与し、「自分は妊娠している」と錯覚させ、初乳を出す準備をさせることに成功しました。その後適切なタイミングで乳腺を発達させるホルモンや分娩のときに分泌するホルモンを与えると、出産をしなくても抗体の入った初乳を出すことがわかりました。この代用初乳をパウダー化して保存期間を延ばすことができれば、多くの子ブタを救えるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

麻布大学 獣医学部 獣医学科 准教授 野口 倫子 先生

麻布大学 獣医学部 獣医学科 准教授 野口 倫子 先生

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臨床繁殖学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたの感性を大事にして進路を選んでほしいです。慎重に考えることも大切ですが、飛び込んでみたら楽しかった、という世界もあると思います。できるかできないか、有利か不利かではなく、「せっかく大学に進むのだからやってみよう」と感性で決めてもいいと思います。それでも、「やりたい!」を貫くことにリスクを感じ、失敗しない道を選びたくなるかもしれません。もし失敗しても大学にはあなたを支える教員がいます。自分で限界を決めつけず、教員に背中を預け一緒に成長していきましょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

麻布大学に関心を持ったあなたは

はじまりは1890年に開設した東京獣医講習所でした。
まだ栄養状態が豊かでなかったこの国の、人の生活を豊かにするため、畜産の発展に寄与するため獣医師の養成をはじめました。それから約130年の時を経て、人の社会と動物のかかわりは深くなり、複雑になり、生きものすべてが新しいバランスで循環する「いのちのあしたのあり方」が求められています。
これが私たちの目指す「地球共生系」です。
最先端の研究と確かな実践力で、「人と動物と環境」に向き合い、地球のあしたをつくる。これが私たち麻布大学です。