豆乳では不快に感じ、豆腐では美味しく感じる大豆の香りの不思議
大豆の青臭い匂いを、豆乳では不快に感じる
植物には、「緑の香り」と呼ばれる青臭い匂いがあります。この匂いは、人間にとっていい香りの場合もあれば、不快な匂いになることもあります。大豆にも同じように青臭い匂いがあり、豆乳にすると多くの人が嫌だと感じる匂いになります。市販されている豆乳にこのような匂いが少ないのは、大豆を熱処理して匂いを作る酵素を破壊したり、そのような酵素を持たない大豆を人工的に作り原料としたりしているからです。
豆腐では、青臭い香りが美味しさの素となる
ところが、豆腐の場合は、大豆の青臭さが美味しさの素となるコクを出すための必要な香りになります。これは、人間の匂いに対する学習機能も関係しています。豆乳は比較的新しい食品で、文字どおり牛乳の代替品として販売されました。最初から牛乳に似たものとして脳に刷り込まれていたために、中に青臭い匂いがあることは受け入れにくかったのかもしれません。一方、豆腐は伝統食品なので、豆腐の味の中に青臭さがあることに日本人は慣れていました。そこに味覚の調和を感じる感覚を育ててきたのです。豆乳の場合は青臭い匂いをいかに消すかが課題ですが、豆腐は逆にどのような香りを持たせるか重要になります。
豆腐にふさわしい香りを持つ大豆を探し出す
世界の大豆には、品種として数千の系統があります。その中には、変わった香りの大豆や匂いが強い大豆も数多くあります。そこで、大豆の香りを分析することで、豆腐の原料にふさわしい大豆を探し出すという研究が行われています。ただし、そのような大豆の中には日本の風土では栽培することができないものもあるため、日本にすでにある大豆と掛け合わせることで遺伝的に改良し、それを原料に豆腐を作り、評価しています。
日本の大豆は、価格面では安い外国産の大豆に太刀打ちできません。そのため、品質で外国産の大豆と勝負しようとしているのです。
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