私たちの身体を守る大切な機能「オートファジー」って何?
空腹で困ったら自分を食べる
お腹が空いて困ったら自分を食べる、そんな究極の自給自足ともいえるエネルギー補給を行っているのが、「細胞」です。私たちの身体を作っている細胞には、飢餓状態に陥るとやむを得ず自分の成分を分解してエネルギーを得る「オートファジー」という機能が備わっているのです。
オートファジーの研究で日本は世界をリードする存在です。1993年にオートファジーに関わる遺伝子が発見されたことで研究が飛躍的に進みました。
細胞内のお掃除ロボット
細胞内でオートファジーの働きを行うのは、「オートファゴソーム」という小器官です。近年の研究によって、このオートファゴソームには、細胞内の不要物を吸い取る掃除機のような役目があることもわかってきました。しかも、オートファゴソームは、緻密にプログラムされた賢いお掃除ロボットのように働きます。第一に、いつも細胞内に存在するのではなく、掃除が必要なときだけタイミングよく現れます。第二に、普通の掃除機はゴミを集めたらどこかに捨てる必要がありますが、オートファゴソームは古くなったタンパク質など不要物を集めて分解し、再利用できるようにします。これが細胞のエネルギー源となるのです。細胞内には効率的なリサイクルシステムができているというわけです。
病気の治療に役立つ可能性
オートファゴソームが細胞内のどの場所で作られるのかは長らく謎でした。しかし、細胞内の物質に発光タンパク質で色を付けて観察した結果、ミトコンドリアと小胞体が接する場所で作られることが突き止められたのです。これは2013年3月のことで、世界初の発見でした。次の課題は、オートファゴソームが作られるメカニズムの解明です。最近では、オートファゴソームが細胞内に侵入した病原体を見分けて攻撃し、私たちの健康を守ることもわかってきています。オートファゴソームの生成を制御できるようになれば、やがてはがんやアルツハイマー病などの新しい治療法や薬ができると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 医学部 医学科(取材時) 教授 吉森 保 先生
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