バイオテクノロジーで新しい花を作り出す!
産業振興だけではなく、絶滅危惧種の植物を守る
観賞用の花のことを「花卉(かき)」と呼びますが、日本は世界でも有数の花卉生産国です。現在切り花や鉢植えなどで楽しまれている花卉のほとんどは、できるだけ大きく美しく、さらに長持ちするよう、さまざまな研究に基づく品種改良が加えられています。これらの研究は主に、農家の生産性を伸ばしたり、収益性の高い花卉を作り出したりして、花産業の振興をめざすものですが、「園芸学」の研究には、もう1つ大きな役割があります。それは、絶滅が危惧されている植物を次世代まで残せるようにすることです。
気候変動や病害にも強い品種を生み出す
お彼岸の時期、お墓に供えたり、ドライフラワーの素材に使われたりする「リモニウム(スターチス)」という花があります。北海道では最も多く生産されている花卉なのですが、バイオテクノロジー分野の研究は十分に進んでいません。ただ、急速に進む温暖化や、それにともなう新たな病害などに耐えられる品種を開発しなければ、生産を維持することさえ難しくなります。そこで、リモニウムのDNA量を2倍にして、暑さや病気に強い品種を開発する研究が進められています。
生態系にとっても「花」は重要な存在
日本の山野にはさまざまなユリが自生していて、その一部では絶滅が危惧されています。ユリは発芽から開花まで3年、種によっては6年かかり、また、ウイルス病におかされやすいなどの問題があります。それでも、花は生態系の一部を構成する重要な存在であり、「持続可能な未来」をめざすSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、種の保存に取り組まなければなりません。絶滅危惧種を保護するとともに、バイオテクノロジーを利用してそれらを品種改良に活用する取り組みがあります。
園芸学を含む「農学」は、農業に従事する人のためだけの学問というイメージがあるかもしれませんが、農学の研究は、持続可能な未来を実現する上で非常に重要なものなのです。
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先生情報 / 大学情報
酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 森 志郎 先生
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園芸学、花卉園芸学先生が目指すSDGs
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