廃棄物からのエネルギー回収で、循環型社会づくり
ゴミや下水汚泥からエネルギーをつくる
天然資源の利用を抑えるため、廃棄物からエネルギーを回収し、効率よく再利用する技術の研究が盛んに行われています。ひとつはゴミの利用で、ゴミの高効率な焼却発電や、生ゴミを発酵してつくるメタンガスを使った発電などです。もうひとつは、下水汚泥の利用で、下水処理の段階で漉(こ)し取った汚泥をゴミと同様に燃焼させたり発酵させたりしたもので電力を得るという同じ方法です。これらはバイオマス資源の有効な利用法として評価されています。
「静脈インフラ」の集約・効率化
廃棄物を処理するのは、生物で言うと「静脈」にあたる働きになります。人口減少により社会基盤(インフラ)を維持する労力も減少していく中では、このような部分は集約化し効率のよいシステムを組むことが重要になると考えられています。現在は、下水は下水処理、ゴミはゴミ処理それぞれでエネルギー回収は完結していますが、互いに補完し、共通で処理できるのでは、という観点からの研究も始まっています。
例えば、下水処理では微生物の力で汚水を浄化する工程がありますが、必要な酸素の供給やかく拌のために「ばっ気」という操作をします。これに要する電力は膨大で、国の電力の約1%を使用しています。ゴミで作った電力をそこに使う組み合わせもひとつのアイデアです。逆に、ゴミ処理には水分も出ますから、それは下水処理の分野で処理するなど、単純な連係から、さまざまな技術の組み合わせが考えられます。
アジアなどへの貢献も
このように、別々に進められる研究や技術の融合を可能にし、地域の特性に応じた循環型の社会基盤をつくることが重要です。そのために、どのくらいエネルギーや環境負荷が軽減され、最終的にはコストがどのくらい下がるかという試算をし検討することも必要です。日本の社会基盤はかなり整備されているので、すぐに全面的な転換ができるわけではありませんが、これから整備が必要になるアジアなどの途上国にも貢献できる研究です。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 高岡 昌輝 先生
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