熱との戦いを制して、サステイナブルな社会の実現へ
あらゆる機器は熱と戦っている
飛行機はもちろん、自動車やパソコンなど、あらゆる機械や機器は熱との戦いが宿命となっています。一般に、発生する熱から、それら機械機器を守るために、熱交換器が使われます。熱交換器は、温度の高い流体から温度の低い流体へ熱を移動させる機器です。例えば電気エネルギーの供給元である発電所は熱交換器の塊のようなものです。また熱交換器は機能に比例して機器が大きくなりやすいため、私達研究者は、効率アップを行うことで小型化を実現し、省エネルギーだけでなく省資源にも貢献することが重要な課題です。
「気液二相流」で効率を向上
熱交換器の効率を上げる方法としては、「沸騰」や「凝縮」を利用します。「沸騰」は沸点を変えられる冷媒を使い、低温で沸騰するようにすると、外気を取り込んだ際に激しく沸騰が起こり、分子運動が盛んになって熱を回収します。「凝縮」は例えば冷えたジュースが外気に触れると容器に水滴が付着します。これは空気中の水分が冷やされて、まさに凝縮した水滴としてあらわれます。一方でジュースは、水分の運動エネルギーを放出し、温まります。
沸騰も凝縮も、分子の運動形態を変えることで熱回収率アップにつなげているものです。ただし、気体と液体という流体特性の違うものを熱交換器内に流すこと(気液二相流)で、物理現象はとても複雑になります。流体の流速などで現象も変わるため、数式化するには可変要素が非常に多く、機器設計のハードルとなるのです。
エコにつながる工場排熱の再利用
熱交換器の効率アップは省エネルギーをもたらし、環境に優しい、持続可能(サステイナブル)な社会の実現に寄与することになります。さらに環境の観点から考えるべきなのが、工場排熱です。再利用するには多額の設備投資が必要なため、捨てざるを得ないエネルギーがたくさんあふれています。現在、工場排熱に関して世界中でさまざまなアイデアが出されており、うまく再利用できれば省エネルギーだけでなく、地球温暖化問題が解決する可能性も秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 機械システムプログラム 准教授 榎木 光治 先生
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