未解明な病気に挑む「医学研究」への高まる期待

未解明な病気に挑む「医学研究」への高まる期待

「骨髄異形成症候群」って?

広島・長崎の原子爆弾によって放射線障害を受けたヒバクシャにおいて、被爆後に血液がんである白血病の発症が増加したことが知られています。一方で、1990年代頃から、従来の白血病とは異なる、貧血・白血球減少・血小板減少を来たす血液がんのひとつである「骨髄異形成症候群(MDS)」の増加が注目されました。「骨髄異形成症候群」はヒバクシャ以外でも60歳以上の高齢者にみられ、年齢とともに増加しており、高齢化社会のわが国において急速に患者数が増えている病気です。経過とともに、白血病に移行することから前白血病状態とも呼ばれている血液の難病です。

白血病と併発することも

「骨髄異形成症候群」は、血液細胞を産生する親元である造血幹細胞の異常によりすべての血液細胞ができなくなる造血障害をきたします。そのため、貧血、肺炎などの感染症、血が止まりにくい出血傾向などの症状がみられます。
ある歌舞伎俳優も、この「骨髄異形成症候群」を患いました。彼の場合は、最初、白血病と診断され抗がん剤の治療により完治後に、「骨髄異形成症候群」を発症し、異なる2つのタイプの血液がんと闘うことになったのです。また、放射線物理学者のキュリー婦人もこの病気であったと言われています。

医学研究で、病気の解明に貢献を

この「骨髄異形成症候群」が明らかになる前は、その実態や原因、治療方法がまるでわからず、「高齢者の貧血」と認識されていた時代もありました。しかし、医学研究の結果、若年者に見られる急性白血病とは異なり、むしろ、胃がんなどと同じような原因で生じることがわかり、「第2の白血病」と呼ばれるようになりました。「複数の遺伝子異常が蓄積し発症する分子機序」が推測されていますが、全貌は明らかになっていません。また、確立した治療法もありません。今後、さらに患者数の増加が予測され、医学研究によってこの病気の原因解明と治療法の開発が急務となっています。

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東京薬科大学 生命科学部 生命医科学科 教授 原田 浩徳 先生

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メッセージ

多忙な医師が臨床を行いながら基礎的な医学研究を行うことは難しいのが現状です。臨床の現場で生じた疑問や膨大な臨床データをもとに研究を立案し研究を行い、得られた結果を臨床の現場に反映させる「トランスレーショナルリサーチ」は医学研究の基本です。それを実践する医師が減少の一途をたどっています。
しかし、医学研究は医師の専売特許ではありません。病気を「診る」のは医師ですが、病気を「見る」のは誰にでもできます。病気を知り、病気を治すための「医学研究」という学問分野があることを、ぜひ知ってください。

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