地域や環境と調和した21世紀の建築デザインを考える
21世紀の建築デザインの特徴とは?
技術や社会の変化にともなって、時代ごとに新しいセンスが登場するのが建物や空間のデザインですが、21世紀にはどのような特徴が見られるのでしょうか? 透明感のある建築で知られる、石川県金沢市にある「金沢21世紀美術館」の建物には、表と裏のないガラスのサークルによって、敷地内のどこからでも人々が入れる開かれたデザインです。多彩な機能がありながらも、円形というシンプルなデザインに集約され、周囲の環境との一体化が図られています。このように、現代における建築は、建築物だけが主張するのではなく、「周りと調和した環境に溶け込むデザイン」が提唱されているのです。
人の流れや生活行動に調和する空間デザイン
その特徴は、空間デザインにも表現されています。大阪市にある梅田阪急ビル15階のロビー、「tomarigi(トマリギ)」もその一つです。待ち合わせ場所として多くの人が立ち寄るこのロビーは、「空に浮かぶ森」をコンセプトとしてデザインされました。長さ10mほどの木材が緩やかな曲線を描き、カウンターから子ども椅子の高さまで、連続的に変化したロングベンチが配置されています。さまざまな人が立ち寄り、人を待ったり、時間を費やしたりするための場所として、人の流れや行動に自然に溶け込むようにデザインされているのです。
デザインのプロセスで最も大切な作業とは?
では、周囲の環境や生活行動に調和したデザインを考える上で、最も大切なプロセスとは何なのでしょうか? 創造性や個性ももちろん大事ですが、一番重要な作業は、リサーチです。東日本大震災からの復興まちづくりに向けても、学生と地域の暮らしのリサーチが行われています。誰が、どういうときに、どんなふうに利用する場所(もの)なのか、誰に対して、ではなく、どんな行動特性を持った人に提供するのかということを重要視して考えていきます。それが明確になって初めて、その行動を「デザイン」という形に落とし込むことができるのです。
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