集まって暮らす新しいカタチ「コーポラティブハウス」
家の外側に広がる環境も「住まい」の一部
家を建てる人は、間取りやインテリア、外観などを一生懸命考えます。「オープンキッチンがいい」「子ども部屋は明るい雰囲気にしたい」など、確かに家の中のプランも大事ですが、実は家の外側に広がっている住環境も、人間の暮らしに重要な役割があります。
被災地に建てられる一般的な仮設住宅を例にとると、中は普通のアパートと同じでも、一歩外へ出ると同じ住戸がずらりと並び、一帯には店も、くつろげるフリースペースもなく、外食や買い物をしようと思っても不便です。
居住者が共同でつくり上げる集合住宅
仮設住宅でも、一般の住宅でも、複数の世帯や人々が集まって暮らしていることに変わりありません。そこで暮らす人々の生活の質を確保するためには、住宅の内部だけでなく、外側の環境を合わせて考える必要があります。どんなにステキな家でも荒野の一軒家では暮らしづらいですし、複数の世帯が集まって暮らすマンションなどの集合住宅でも、それぞれが自分の住戸にだけ関心を寄せ、隣の人の顔も知らないのは味気ないものです。人々が集まって暮らす環境にまで目を向けた住まいの提案として、住人が共同で一から集合住宅をつくる「コーポラティブハウス」があります。
集まって暮らす新しいカタチを「建築」が演出
コーポラティブハウスとは、入居希望者が組合をつくり、プランニングから設計・建築までを共同で進めていく方式で、欧米では広く普及しています。通常のマンションと違い、暮らす者同士が話し合いながらひとつの集合住宅をつくり上げていくので、各住戸だけでなく広場や通路などの共有部分も自由にデザインや設計することができます。
例えば、遊び場にもなる路地や井戸端会議ができるベンチスペースなど、集まって住むことで生まれる空間づくりの可能性が広がるのです。建築の大きな役割は、人の暮らしの質を向上させることです。集まって暮らすにぎわいや、交流や楽しさを、建築が演出する時代が来ています。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 工学部 工学科 教授 長田 直之 先生
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